こどもたちの体を作る根源である「食べ物」。
日々、たくさんのこどもたちの「おいしい!」の声を生み出す
食のプロはなにを考え、どんな思いで給食をつくっているのか……。
こども施設の給食に関わる発注業務の省力化と食育の推進を目指し、
連携することになったオイシックス・ラ・大地さんとコドモン。(※1)
こども施設の<給食室>で働いていたという共通点がある両社の栄養士ふたりに
話を聞いてみました。
オイシックス・ラ・大地株式会社の加月香奈美さん(以下、敬称略)と
コドモンの給食管理機能担当の森山綺佳。
「食」を通してこどもたちに伝えたい給食室の思いとは……?
――加月さん、先日(2020年12月22日)はコドモン活用支援チーム主催の
Webセミナーにご登壇いただき、ありがとうございました。
「食育」、「食べること」についてもっと詳しくお話しをうかがいたく、あらためて取材のお時間をいただきました。本日はよろしくお願いします。
( 加月 )
こちらこそ、先日のセミナーは自分の考えを整理するよい機会になりました。
ありがとうございます。
――Webセミナーのテーマは「食育」でした。
栄養士さんとして「食育とはこういうもの」と学ぶ機会はあるんでしょうか?
そもそも「食育」とはなにを目指す教育なんでしょうか?
( 森山 )
学校で「食育白書」(※2)を読んでいた記憶はありますが……。
( 加月 )
食育の授業というのはないですよね。
( 森山 )
「いろんなものを食べられるようになる」だとか「好き嫌いをなくす」みたいなはっきりした目的が決まっているわけでもないと思います。
( 加月 )
私は「食育とは生きる力を育むことだ」というのをどこかで読んだのをきっかけに考えるようになりました。
栄養士さんや保育園によって食育のとらえ方には幅があると思います。
私の目指す食育のゴールは「ごはんを食べるってことを楽しいと感じられること」なんです。
( 森山 )
すてきですね。
( 加月 )
そのためには保育者の声かけってすごく大事なんです。
「ひとくち食べてみよう」もそうですけど、一緒に食べて「おいしいね」とか、あるいはその子が食べなくても保育者が食べて「わ~おいしい!」って自分の感じ方を伝えるとか。
その伝え方は先生の「ウデ」の見せどころでもありますね。
( 森山 )
私は、「食育」という字の通り、食には育てる力があると思っていて。
体が育つ、成長するのは当然として、人間的にも成長できると思うんですね。
食体験を通して人間的に育つことがゴールです。
――とはいえ、どれだけ保育士さんが声かけしても食べられない、食べるのが苦手なこどもはいますよね。
( 加月 )
うーん。食が細い子、食の偏りの強い子というのはいますね。
私も実際、「白米しか食べない」子に会ったことがあります。
こういう食に偏りのある子に対して、これは絶対NGだというのは、「食べるのを強要すること」ですね。
――少しは白米以外も食べてほしいと思うのが親心といいますか保育者心といいますか……やはり心配です。
( 加月 )
栄養面でも心配になりますよね。
考え方は保育士や保育園、保護者それぞれだと思うんですけれど、私の場合は「今は白米が食べたい時期」なのかなってぐっとガマンします。
わたくしごとなんですが、今まさに娘がその時期でごはんしか食べませんが……ガマンしています(笑)
( 加月 )
「食事」では白米しか食べてなくても、たぶん、どこかしらでほかのものも食べてると思うんですよ。
間食で野菜ジュースを飲んでいたり、お菓子を食べていたり。
ただ、家庭ではなく保育園という公共の場になった場合、ひとりだけ好き嫌いを容認するわけにはいかないので、「ひとくち食べてみよう」という声かけは必要なのかな、と思っています。
( 森山 )
白米しか食べないとわかっていても、声かけはする。
けれど無理強いはしない…という感じですよね。そのうち食べるようになるかもしれないし。
( 加月 )
そうですね。私が出会った子は0歳児だったんですが、その子が3歳、4歳、5歳と成長していくあいだずっと白米しか食べなかったかと言うと、そんなことはないんです。
おかずも食べるようになっていたり、逆に今度はおかずしか食べなくなっていたり……。
ご両親や保育者は、「その時」に直面しているので、すごく悩まれるとは思うんですけど、
長い目で見てあげたら、人生のうち白米しか食べない期間って……そんなに長くないと思うんです。
数か月続いても一生そのままではない。だからそこまで神経質にならなくてもいいのかな、と思っています。
( 森山 )
私の経験からも0歳児は食べたいものに偏りがあるという印象があります。
幼児食のかたさのものが食べられる月齢なのにやわらかいものを食べたがる子はよくいます。
給食では、やわらかいものに変えて提供したりするんですが、それもずっとではないんですよね。
成長とともにかたいものも少しずつ食べられるようになる。
だから私も、加月さんと同じ「今だけだから大丈夫」というスタンスです。
( 加月 )
年齢が低いと食べなれていないものを拒否するということもありますね。
不信感で食べないというか。
白米しか食べない子がいるのも、白米はおうちで今まで出てきたものと見た目が一緒で安心できるという面もあると思います。
家で作ってるおかずと、給食のおかずは見た目も味も若干違いますから。
0歳で保育園に入りたてだと、食べ物だけでなく環境にも慣れていないじゃないですか。
知らない場所で知らない大人にいきなりスプーンを差し出されて……
とにかく不信感があって「食べてもいいのかな?」という判断ができなくて、確実に大丈夫だと判断できている白米しか食べない……と。
( 森山 )
食べ物を見て味を想像できるというのは、今まで食べてきた経験の蓄積でもありますからね。
あとは人が変わったら食べない子、というのも聞きますね。
( 加月 )
担任の先生からは食べるけれど、ほかの先生からは食べない子はよくいますね。
ほかにも家では食べるけれど園では食べない子、園では食べるけれど家では食べない子というのも聞きます。
そして、頓着なく誰からでもなんでも食べる子もいる……。
食への興味関心や積極性には個人差がありますね。
(第2回へつづく)
答えのないテーマについて、みなさまとオンラインで意見交換したいと考えています。
ぜひ下記のアンケートからご意見・ご感想をお寄せください。
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※全4回の連載終了後、アンケート結果をもとにした記事を公開予定です。
<プロフィール>
加月香奈美さん
オイシックス・ラ・大地株式会社 店舗外販事業部施設食材流通セクション
栄養士として保育園に5年半勤務。
森山綺佳
コドモン カスタマーサクセス 活用支援チーム
管理栄養士として、保育園や病院、老人ホームの給食業務に従事。
※1 オイシックス・ラ・大地の保育事業向け食材宅配サービスの配送エリアは、関東1都3県:東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県となっております。関西地域も順次対応予定です。
※2 食育白書…食育基本法の第15条に規定されている食育の推進に関して講じた施策に関する報告書のこと。
毎年、農林水産省が編集、公表している。