お知らせ

栄養士が語る「おいしい」の育て方・第3回 園での食事を通して、たくさんの「おいしい」を知ってほしい

こどもたちの体を作る根源である「食べ物」。
日々、たくさんのこどもたちの「おいしい!」の声を生み出す
食のプロはなにを考え、どんな思いで給食をつくっているのか……。

こども施設の給食に関わる発注業務の省力化と食育の推進を目指し、
連携することになったオイシックス・ラ・大地さんとコドモン。
こども施設の<給食室>で働いていたという共通点がある両社の栄養士ふたりに
話を聞いてみました。

オイシックス・ラ・大地株式会社の加月香奈美さん(以下、敬称略)と
コドモンの給食管理機能担当の森山綺佳。

「食」を通してこどもたちに伝えたい給食室の思いとは……?


 

――第1回でおふたりの食育のゴールについてうかがいました。
加月さんは「ごはんを食べるってことを楽しいと感じられること」、森山さんは「食体験を通して人間的に育つこと」ということですが、実際に行われたことのある食育例を教えてください。

森山
いろいろありますよね。

加月
施設の規模によっても変わってきますね。
 

定番の芋ほり、カレー作り、野菜の皮むきから鮭の解体ショーまで……

 
森山
私の在籍していた園では、4、5歳児クラスでカレーを作ったりしていました。野菜の皮をむいて切って……ただ、煮るところまでやると時間がかかるので、それは「やってくるね!」という感じで引き上げて出来上がりを楽しみに待ってもらう形で。
低年齢クラスでは、調理はできませんが「食にふれる」機会を作ろうと、白菜や小松菜など葉野菜をちぎったりしてもらっていました。
あとは栄養士が行うわけではありませんが、保育士さんがお散歩で畑のそばを通るときに「あれはにんじんの葉っぱだよ」と教えてもらったり。

加月
私は0、1、2歳だけの小規模園と、園児人数150人の大規模園に在籍していましたので、分けてお話ししますね。
森山さんもおっしゃっているように、0、1、2歳は調理はできないので、野菜をちぎったり、玉ねぎやとうもろこしの皮をむいたりのお手伝いしてもらっていました。
園で栽培している野菜の水やりを先生と一緒にやることで「野菜を育てている」という経験をつくったり。
いちばんオーソドックスで取り組んでもらいやすいのは、野菜の絵本や紙芝居でしょうか。
絵本には、野菜に限らず食べ物が出てくるものが多いので、保育士さんたちは食育という意識なく食育を行っていらっしゃるとも言えます。

森山
そうですね。おままごと遊びで調理や食べるマネをするのも食育だと思います。

加月
これは設備面のお話しになるんですが、給食室がガラス張りになっている施設もありました。
こどもたちがいつでも給食室の中が見られる状態だったんです。
雨でお散歩に行けない日などは、給食室の前に園児が集まってきて、調理を見学していました。

森山
失敗できないですね。そういえば、施設の設備にもかかわるところでは、園の出入り口に給食で出した野菜を展示して、こどもや保護者に触れてもらう機会をつくっているとか、3、4、5歳児の各クラスに炊飯器とお米、お水を渡して、洗米・浸水・炊飯をしてもらうという話を聞いたことがあります。

加月
大規模園は、すごく地元に根づいている園で、近くの魚屋さんがやってきて秋に鮭の解体ショーをやってくれたり…なんてこともありました。

森山
それはすごい!!

加月
お芋ほりや野菜の栽培、進級前は3、4、5歳がホールに集まってのケーキづくりもしていました。
園児の人数が多いと0、1、2歳に調理のお手伝いをしてもらうのは保育士さんの負担が大きいので、絵本とかが主でしたね。
そういえば、同僚の1歳のお子さんは保育園で保育士さんと一緒にミニトマトを栽培していたそうで。
収穫したミニトマトを1個だけ持ち帰ってきてずっと手に持ってすごく大事にしていたと聞きました。家でお皿にのって出てくるトマトとは違う感覚があるんでしょうね。

森山
そうですね。栽培をきっかけに、今まで食べられなかった食材をはじめて食べてみたという話もよく聞きます。

保育のプロ、食のプロとして互いを尊重することが大切

 
――これらの食育を行うには、保育士さんとの連携が欠かせないと思いますが、Webセミナーでも連携をとるのが難しい……というご意見がありましたね。
 
加月
さきほど小規模園にいたことがあると話したのですが、その小規模園は開園前の立ち上げから一緒にやっていました。なので、職員みんな仲がよくて、私自身も言いたいことはしっかり言ってたんですが、その環境でもスムーズな連携というのは難しかったですね。
保育士と栄養士では勉強してきていることも保育園でなにを目的にしているのかも違うので、どうしてもわかりあえない部分があるというか……。

森山
(激しくうなずく)
私は、けっこう保育士さんとコミュニケーションとれているほうだったと思います。業務のすきを見て保育室に行って、こどもたちの様子を聞いたり、こどもと遊んだりもしていました。
ただそれでも……保育士さんからは「食のプロ」というふうには思っていただけていないと感じることはありましたね。

加月
どうしても施設全体で見たときに、栄養士って少数派になっちゃうんですよね。
小規模だ栄養士という職はひとり。施設の職員の大多数は保育士さん。施設長も保育士さんであることが多い。
相談や議論をするあいだに目的がずれてきたなと感じても、言い出しづらかったり、言ってもわかってもらえなかったり……。

森山
保育のプロ、食のプロと互いに尊敬しあって、それぞれの観点から意見を尊重しあえればいいんですけど……。

加月
私が勤めていた施設には系列園もなかったし、他園の栄養士さんとお話しする機会ってありませんでしたが、こんなふうに栄養士同士で悩みを相談できると気持ち的に楽だったかもしれません。

森山
保育室とは見えない壁がありますよね。

加月
壁、わかります。
ただ、こうして難しい難しいとばかり言っていてもなにも変わらないので、私はこどもたちの食事の様子を見に行くことを大事にしていました。
給食室目線で見るのと、保育室目線で見るのは違うので、月に1度でも実際に見せてもらいに行こうと、時間をつくって。
栄養士としては、離乳食だったら切り方は小さすぎないか大きすぎないか、ぱさぱさしていないか……と食べ物のほうを検討しがちなんですけれど、保育士さんは丸のみしていないか、よく噛めているかとか……こどものほうを見ているとか。

森山
午前中は保育室のほうも予定が決まっていることが多いけれど、夕方は自由遊びの時間になっていることが多いので、私はその時間に子どもたちと遊びにいって、遊びながら保育士さんとお話しするようにしていました。
連携をとるのは難しいけれど、こういう想いがあってこの食育計画をやりたいんですということをきちんと伝えることが大事だと思います。自分の芯の部分をぶらさず、まっすぐ発信していく。難しいけれど、そこは努力していました。

(第4回へつづく)

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※全4回の連載終了後、アンケート結果をもとにした記事を公開予定です。


<プロフィール>
加月香奈美さん
オイシックス・ラ・大地株式会社 店舗外販事業部施設食材流通セクション
栄養士として保育園に5年半勤務。

森山綺佳
コドモン カスタマーサクセス 活用支援チーム 
管理栄養士として、保育園や病院、老人ホームの給食業務に従事。


第4回「おいしい給食のために欠かせないものとは?」は2月24日配信予定です。
絵本の読み聞かせやおままごとも食育。よい食育を行うには施設内での連携が大切!

<バックナンバー>
第1回 「食育のゴールはどこにあるの?」
第2回 「食べられないことは悪ではない」