【保育ICTラボ事業】茨城県つくば市・さくら学園保育園 ゼロから始めた保育ICT導入で想像以上の省力化を実現(中編)

保育ICTラボ事業 ICT活用保育

茨城県つくば市のさくら学園保育園は、全18クラス、園児数380名、職員数95名の市で一番の大規模園です。今回、こども家庭庁の保育ICTラボ事業に「基礎モデル園」として参画し、コドモンの基本機能(登降園管理・保護者連絡・請求・帳票管理など)を導入してゼロからの保育ICT化に乗り出しました。

数年前に保育ICT導入を試みるも、一度は断念した過去を持つ同園。二度目の挑戦によってどのような変化が起きたのでしょうか。永沼真由美園長(写真中央)、統括主任の横島清美先生(写真右から二番目)、主任の沖山陽子先生(写真左端)、事務の福田恵理佳先生(写真左から二番目)、看護師の中村記子先生(写真右端)にお話をうかがいました(※導入前のインタビュー記事はこちらから)。

【まとめ】
・基礎モデル園としてICTコドモンの基本機能をゼロから導入
・職員も保護者も当初の予想よりもスムーズに各機能に慣れることができた
・登降園管理の導入で、毎朝30分かかっていたトラブル対応がゼロに
・帳票のICT化により持ち帰り作業がなくなり、日誌の提出が早まった
・延長保育の利用減など、予想外の副産物も
・園内でICT推進体制を構築。デジタルが苦手な人も得意な人も、ともに関わっている
・アンケートが職員のICT化への反応を知る手がかりに。誰も取りこぼさず、園全体で進化することを目指す

登降園管理がスムーズになって朝に余裕ができた

―保育ICTを導入して約1か月半が経ちました。どのような変化がありましたか。

永沼:想像していたよりもずっとスムーズに、先生方も保護者の方も慣れてくださった印象です。

福田:私たち職員としても、使い始めてから慣れるまでがあっという間でした。目に見えてのわかりやすい変化は、登降園管理です。出入り口となる4か所にタブレットを設置して、登降園の打刻はQRコードかタッチの両方を使えるように整備したのですが、保護者の方々もすぐに使い方に慣れてくださいましたね。

事務室のすぐ近くに設置したこともよかったと思います。「スマホを忘れた」「QRコードを2回かざしてしまった」「手動打刻で別の子の打刻をしてしまった」などのよくあるトラブルが発生したときや、お迎えにくることになったおじいちゃん、おばあちゃんが使い方に戸惑ったときでも、すぐに事務室に声をかけてもらえますから。

中村:欠席管理も大きく変わりました。以前は無料アプリを利用していて、おおむね問題はなかったものの、それでも「送ったはずなのに届いていなかった」などのトラブルが時折あったんですね。タブレット打刻に切り替えてからは、それがほとんどなくなって出欠の確認作業が格段にラクになりました。

以前は、私がアプリで出欠確認した内容をExcelシートにまとめて、内線で全クラスの部屋に伝達していたんですね。でも今は各クラスのタブレットで自動記録され、全職員が状況をすぐに確認できるようになりました。毎回30分以上かかっていた全クラスへの連絡やトラブル対応の作業がすべてなくなったので、ここ最近の朝は本当にストレスフリーです(笑)。

福田:朝にかかってくる電話も減りましたよね。9:30になると、打刻や欠席連絡が未入力の園児の保護者には自動で通知がされるようになっていますので、保護者への連絡確認や事務室への問い合わせも最小限になりました。そのおかげなのかはわかりませんが、導入開始後の1週間で、保護者の打刻忘れがだいぶ減ったことにも驚きました。

また、短時間保育の子どもの延長料金等が発生した場合の手続きも、自動化したことで負担がぐっと減りました。これまではお迎え時に保護者に名前と時間を手書きで書いてもらい、それを事務の職員がExcelに入力して計算していたのですが、ICT導入によって請求計算がすべて自動化されましたので、事務担当としては非常に助かっています。

永沼:延長保育の利用が減ったことも驚きでした。19:00前にはすべての園児が帰る日もあります。時間の可視化が保護者にもよい影響を与えていると感じます。

福田:18:20を過ぎるとタブレットが自動で暗くなり、打刻できる場所も1か所に限定する仕組みにしています。これによって延長時間のズレがなくなり、保護者の方の意識も変わったのかもしれません。

保護者へのお知らせも園内の情報共有もスピーディーに

―お知らせ一斉配信の機能はいかがでしたか。

福田:お知らせ一斉配信は園だよりや給食だよりなどの送信に使っていますが、「何人、誰が見ているか」が確認できるのがいいですね。ちゃんと見てくれているんだな、と安心できますから。職員も同じ画面で内容を確認できるので、園内の情報共有にも役立っています。

永沼:学年別で配信できるのも助かっています。行事の前日などに「年長組さんだけに明日の開始時間が9:00から10:00に変更になりました」といった変更のお知らせも簡単に出せますから。

連絡帳の絵文字は3つまでなど独自のルール決めて運用中

―連絡帳機能の活用はいかがでしょうか。

横島:0歳児クラスで本格的に使い始めました。何度かテスト配信をしつつ、日によって文章が長すぎたり短すぎたりしないように連絡事項は何行まで、絵文字は3つまで、と自分たちなりのルールをひとまず決めたところです。

絵文字を取り入れるかどうかは少し悩んだのですが、「デジタルでもこちらの意図が柔らかく伝わるように絵文字も入れたい」との声が職員からあがったので、じゃあ使ってみようか、と。でも多すぎるとやはり読みづらいので、「絵文字は3つまで」というルールになりました。

中村:0歳児のひよこクラスはお昼寝や排泄の時間など細かい連絡事項が多いため、記録も大変なので複数人で手分けして連絡帳を書いているんですね。アカウント名を「ひよこ」で統一して、誰が入力しても同じ表示になるように工夫しました。最初は操作に不安を覚える職員もいましたが、リーダーが率先して「やりましょう!」と励ましてくれたおかげで、今はパート職員も含めて全員が機能を使いこなせるようになりました。

私が連絡帳機能でいいなと感じたのは、他のクラスの先生たちが書いた連絡帳も閲覧できるところです。「なるほど、こういう伝え方もあるんだな」と参考になるし、保護者が見る前に「その伝え方はちょっと誤解を招くかも」と職員間で表現を相談することもできるのがいいですね。

目に見えて省力化が進んだ帳票管理

―帳票管理の変化についても教えてください。

中村:導入前の期待値がもっとも高かったのが帳票管理でしたが、実際にやってみて一番大きな変化が起きました。以前は3枚の紙に手書きで書いていたものを簡素化して1枚にまとめ、オリジナルの帳票をつくれたことによる省力化が大きいです。先生たちと相談しながら、週案・個別計画・発達チェックリストなど、各カテゴリーをA4サイズに整理して入力できるようになりました。

先日、担任を持っている先生が「コドモンになってから帳票を書くのがすごく楽しくなった」と言ってくれて嬉しかったですね。

沖山:日誌は本当にラクになりました。これまで勤務時間内で終わらないときは持ち帰りで作業をすることもあったのですが、今は休憩をきちんと取ったあとで作業をすれば、もう日誌ができてしまう。もうたまらない快感ですよ(笑)。日誌にあてていた時間を、翌日の準備や他の作業にあてられるようになったことも助かっています。

横島:今はもうみんなすっかり操作に慣れて、以前は2、3日、長ければ4週間近くためこんでいたような日誌も、毎週金曜には必ずあがってくるようになりました。あまりにスムーズになったせいで、逆に「あれ、この作業が一気にくるの?」と私が追われているように錯覚してしまうくらいです。

誰も取りこぼさず、園全体で進化したい

―導入前の慎重さとは打って変わって、かなり順調にICT化が進んでいることがうかがえます。ここまで活用が進んだ要因はありますか? 職員のICTスキルにも個人差があったそうですが、どのように乗り越えたのでしょう?

中村:事前に職員同士で勉強会などを開催していたことも大きいと思いますが、導入後もわからないことをそのままにしない空気づくりを意識しています。疑問や不安はこまめに吸い上げる、わからないことは近くにいる人に聞く、できる人が教える。これを繰り返していくと、みんなができるようになったときのスピードが格段に速いんです。もう私が聞かれてもわからないところまで進んでいる職員もたくさんいますから。

沖山:私は「デジタルに詳しくないけどICT推進派」で、職員がラクになったと喜んでいる姿を見るのがすごく安心しますね。保護者にも「コドモン、どうですか?」と反応を聞いてみたところ、「正直すっごくラクですね!」と教えてくれました。シフトの関係でお会いできないときでも、連絡機能を使えば「歯が抜けました」というような成長の報告もすぐ共有できる。小さなことですがこういうやり取りは今後も大切にしていきたいですから。

―今後は請求管理などの機能も追加で導入予定とお聞きしました。

福田:これまで保育料の振込は銀行振替でしたが、12月からはコドモンの口座振替代行を利用する予定です。銀行の選択の幅が広がることは保護者の方々にとっても便利になると思いますので、サポートの方にきっちり丁寧に教えていただきながら準備を進めている最中です。

永沼:園長の立場としては、職員全員が保育ICTを使いこなせるようになることが目標です。今の段階でアンケートを取ったところ、4人中3人はなんらかの形で使っているようなのですが、「システムを導入しないほうがよかった」との回答も10%未満と少ないながらもあったんですね。その人たちが、ここからどうすれば使えるようになるか、その改善策を考えていくつもりです。誰ひとり取りこぼさずに、園全体で進化していきたいですね。

さくら学園保育園
事業種別:認可保育所
定員:380名
所在地:茨城県つくば市上野1302

さくら学園保育園:インタビュー動画②

【保育ICTラボ事業】さくら学園保育園(導入前インタビュー記事)

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