【保育ICTラボ事業】茨城県つくば市・東岡保育園が挑む! 一人ひとりの子どもに寄り添う保育ICTのさらなる進化

保育ICTラボ事業 保育

2024年の開園当初より積極的に「ICTコドモン」を活用されている茨城県つくば市の東岡保育園。保育の質をさらに向上させるため、こども家庭庁の保育ICTラボ事業に「ICT高活用園」として参画することになりました。
創立者であり60年の歴史を持つ知覧中央福祉会の運営を担ってきた上之涼子園長(写真中央)、その姉であり、工学博士として企業の開発研究部門にて20年のキャリアを積んだ後、保育業界に転身したという異色の経歴を持つ創立者の小峰恵子副園長(写真左)、そして保育士の霜田夕雨子先生の3名にお話をうかがいました。

【まとめ】
・2024年4月の開園当初から「ICTコドモン」を利用。業務が省力化され、すでに十分効果を実感している
・保育ICTラボ事業では、「職員間連絡」「午睡チェック」「写真共有・整理」の3分野で新しい機能を導入予定
・午睡中は照明が暗く、本当にちゃんと呼吸できているかどうか、目視だけでは確認しづらく不安がある
・職員間連絡は、登録や退会の手続きで管理者側の負担が大きいことが悩み
・保育ドキュメンテーション毎日配信。販売用写真は、毎週約200枚から選定するため負荷が大きい

工学博士の熱意で創立した新設園。開園時から保育ICTを利用

ー東岡保育園はどのような園か、特色を教えてください。

小峰:東岡保育園は2024年4月に開園した茨城県つくば市の認可保育園です。0歳から5歳児まで、90名の子どもたちが在園しており、「心やさしく、たくましく、感受性豊かに、生きる力を育てる」ことを保育理念に掲げています。

とりわけ乳児クラスでは「担当制保育」を軸として一人ひとりの発達に寄り添う丁寧な保育を心がけ、園全体としても「子どもが主体的に活動できる環境づくり」を軸に設計・運営しています。

保育園

ー小峰先生は前職は企業に勤める研究者だったそうですが、なぜ保育業界に参入されたのでしょうか。

小峰:私は企業の研究職に20年ほど従事していましたが、年々広がってきたように感じていた世代間での価値観のギャップに疑問を抱く機会が増え、「もしかして幼少期に、その後の人生に大きく影響する何かがあるのでは?」と考えるようになりました。実家が鹿児島で保育園を運営する社会福祉法人を経営していたバックグラウンドがあったため、自然とそのような発想になったのだと思います。

そんなことを考え続けていた折、つくば市が保育園を運営する事業者を公募すると知り、「思いきってチャレンジしてみよう」と手を挙げたのがきっかけです。

上之:姉である小峰から「保育園を設立したいので手伝ってほしい」と頼まれたとき、私としては最初は反対でした。故郷の鹿児島でずっと保育園の副園長を務めてきた自分としては、現場の大変さも知っていましたから。

それでも、姉は一度言い出したら聞かなくて(笑)。最終的には姉の熱意に根負けし、鹿児島を離れて東岡保育園の園長として立ち上げに参加することを決めました。開園2年目となった現在は、ICTの可能性も含めて、新しい取り組みにやりがいを感じています。

保育ICTラボ事業への参画は、つくば市からお声がけいただいたことがきっかけですが、鹿児島の保育園でもコドモンさんを使っていたんですね。私にとっては、すでにあって当たり前のツールを運営する会社からの声がけだったというのも大きかったです。

保育園 園長先生

保育ICTで次に解決したいのは「午睡チェック」「職員間連絡」「写真整理」

ー保育ICTラボ事業を通じて今後、先進機能を順次導入予定とのことですね。

上之:ICTを導入することだけで、園としては大変な負担軽減につながったんです。なので、正直これ以上どうなるのかな……って(笑)。はたして負担軽減につながるのかどうかは気になります。

ー午睡、職員間連絡、写真の共有・整理の3分野で新しい機能を導入予定です。それぞれの現状についてもお聞かせください。

霜田:私は0歳児クラスの担任をしていますが、午睡時の呼吸チェックは「ICTコドモン」で記録しています。以前に勤めていた保育園では5分おきの呼吸チェックをすべて手書きで記録していましたので、デジタル入力はここに来てから初めての取り組みでしたが、特に使い方に戸惑ったということもなく、パソコンやタブレットでスムーズに入力・共有しています。

特に、入園したばかりの時期は、そのお子さんの生活リズムを私たちがまだ把握しきれていませんから、一人ひとりを十分に注意深く見守るよう心がけています。

保育園 午睡

上之:0歳児さんは1日に複数回の午睡を取るのが普通ですから、その子が眠りたくなるタイミングで自由に入眠できることを大切にしています。その後、1歳6か月頃には午睡は1回となっていきます。午前中にたくさん活動し、給食でお腹も満たされ、それぞれのタイミングで入眠できるよう配慮しています。

呼吸チェックの重要性はデジタルでもアナログでも変わりませんが、記録のしやすさや共有性が上がったことは職員間での安心感にもつながっています。
一方で、午睡の部屋は照明を落としますから、本当にちゃんと呼吸できているかどうか、目視だけでは確認しづらい不安もあります。そのあたりを今後は午睡チェック用のICTツールを活用しながらダブルチェックすることによって、より安心して保育にあたれる体制を整えていくつもりです。

小峰:私たちの園は一人ひとりに寄り添った保育を大切にしていますので、連絡帳で確認した子どもの家庭での睡眠や食事のリズム、状況にあわせて、園での過ごし方も考えています。

脳がもっとも発達する0歳から2歳までは、発達の土台がつくられる大切な時期です。家庭での過ごし方を園生活に反映し、その子自身の発達をしっかり見ながら環境を整えていく。それによって、子どもたちが主体的に思考し、動けるようになっていく。そんな保育が実現できる環境づくりを考えています。


(園児一人ひとりの午睡の予定は紙で管理)

ーでは、職員間の情報共有は、現在はどのような手段を使っていますか。

霜田:主に他社の業務用チャットツールを使っています。ただ、保育中はスマホをさわれませんので、基本的には休憩時間に確認して、緊急時は口頭で直接伝えるようにしています。遅番や短時間勤務の先生方との情報共有は、紙のノートも併用しています。

上之:ただ、そのツールは新しい職員の登録や退職者の対応手続きがやや煩雑なため、管理者側の負担が大きいことが悩みのひとつです。また緊急時に職員全員にすぐ連絡が取れないという問題をクリアするために、よりスムーズな連絡手段を検討しています。

小峰:それほど急ぎではない情報の共有であれば今のツールでも大きな不便はないのですが、ストレージ容量が非常に少ない点は悩ましいですね。容量不足のため、開園2年目にして、すでに新しいアカウントを作成し直しました。有料プランに切り替えれば容量は当然増えますが、コスト面からは避けたいのが本音です。

ー写真の共有・整理に関しては、現在はどのように行っているのでしょうか。

霜田:写真整理は月末の恒例作業ですね。各クラスで毎週200枚前後の写真を撮影・整理した上で、販売用写真を選定しているため、かなり時間がかかっています。できるだけ全員がまんべんなく写るように、かつ保育ドキュメンテーション用に子どもの表情や活動内容にも注目して選ぶため、どうしても気を遣う部分が大きいですね。

保育士さん

上之:撮影の際は、先生たちに「にっこり笑ったかわいいだけの写真ではなく、子どもたちの変化や発達が捉えられるような場面を撮ってください」とお願いしています。例えば、子ども同士で喧嘩をしている様子や、それを周りの子がどう見ていたかなども、写真に残すことで、その後の保育の振り返りにつながっていきます。

靴下を自分で履こうとしている様子をストーリー仕立てに見せるなど、日常の成長を伝える手段としても写真を活用しています。以前は年度末にまとめて写真を印刷していましたが、現在は日々の保育ドキュメンテーションでそのまま保護者に共有しています。写真は単なる記念ではなく、子どもの発達や変化を捉えるツールと位置づけているからです。このような取り組みは、保育の振り返りや職員間の研修にも役立っています。

小峰:もちろん、情報を口頭で伝えることもできますが、デジタルの活用によって、より解像度が高い情報共有ができるようになった側面は大きいと思いますね。写真の選定作業の時間を短縮できるという省力化のメリットだけではなく、保育ドキュメンテーションを活用することがひいては園全体の保育の質の向上にもつながっていくはずだと考えています。

保育園 写真

食育や保育ドキュメンテーションなど、今後の保育ICT活用へ膨らむ期待

ー最後に、今後の保育ICT活用に関しての展望をお聞かせください。

上之:園長としては各クラスの保育ドキュメンテーションを職員間で共有することによって、園内研修をさらに活性化させていきたいですね。私たちの園は先生同士が気軽に会話しやすいように職員室を広めに設計しています。そのおかげで職員室で保育ドキュメンテーションを起点にしたコミュニケーションが生まれやすくなり、すでに自然な学びの場が育まれているように思います。

また、食育にも力を入れていますから、給食の写真をもっと見やすく提供する方法も模索中です。

小峰:今後は、職員間連絡として「せんせいトーク」、午睡チェック用に連携サービスの「ココリン」、さらに写真共有・販売については ”保育AI” を用いた「せんせいフォト」を順次導入する予定です。私たちが理想とする一人ひとりの発達に合わせた丁寧な保育を実現し、保育の質を高めるための手段として、今後もICTツールを活用しながら改善と工夫を重ねていくつもりです。

保育園 副園長先生

東岡保育園
事業種別:認可保育所
定員:90名
所在地:茨城県つくば市東岡250

東岡保育園:レポート動画1本目

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