園長が知っておきたい保育士養成校におけるICT教育の今~採用や人材確保につながる変化とは~

ICT活用 保育

近年、保育現場におけるICTの導入が進み、出欠や連絡帳の管理、保護者とのコミュニケーションなど多くの保育業務がデジタル化によって大きく変化しています。こうした変化に対応するため、保育士養成校でもICTに関する授業が取り入れられており、学生たちは就職後の即戦力につながるICT知識を身につけています。
この記事では、保育士養成校におけるICT教育の最新状況と、学生たちの就職に対する意識変化について紹介します。

保育士養成校で進むICT知識の取得

従来の保育理論や実習に加え、保育ICTに関する教育に注力する養成校が増えています。

保育ICTの知識向上が重視される背景

保育士養成校で保育ICTに関する教育が重視されるようになった背景には、保育現場の働き方改善と人材確保の必要性があります。ICTシステムの活用により、事務作業の効率化、保護者との情報共有改善、子どもの発達記録管理の向上などが期待でき、より質の高い保育サービスの提供が可能になります。また、社会全体でDX人材育成が求められる今、保育分野も政府の重点分野のひとつとして位置づけられています。

保育ICTに関する教育の変遷と現状

保育士養成校における保育ICTに関する教育は、2019年の文部科学省による教職課程カリキュラム改正で「情報機器や教材の活用を保育の計画・実践に役立てること」が義務化されたことから始まりました。2021年には「情報通信技術を活用した教育の理論及び方法」が必修科目となり、2024年には保育専門のICT教科書が出版されるなど、より実践的なカリキュラムへと発展しています。
現在では実際の保育現場で使われているICTシステムやアプリを用いた実習授業も導入され、学生は理論だけでなく実際の操作スキルも身につけて現場に即戦力として対応できるよう学びを深めています。

こうした全体的な動向を踏まえ、実際に養成校ではどのような実践的な取り組みが行われているのでしょうか。具体的な事例を見てみましょう。

養成校で広がる保育ICT授業の実践-筑波研究学園専門学校の取り組み

筑波研究学園専門学校では、地域や産業界からのニーズを的確に捉え、学生が就職後すぐに現場で活かせる知識とスキルの習得を重視しています。
こども未来学科(保育士・幼稚園教諭養成課程)では、現場で即戦力として活躍できるよう、保育ICT活用に関する授業と検定を積極的に導入しています。

こども未来学科学科長の押手美加先生からは「保育ICTの授業と保育ICT検定の導入は、まさに実践力を備えた保育士の育成を目指す本校の教育方針の一環だと考えています。」とお話しいただきました。「保育現場の変化に柔軟に対応できる力を、在学中から身につけてほしい。保育ICTもそのための重要なツールの1つです。」と、学生時代から現場対応力を養う意義を強調しています。

こうした教育方針に基づき、保育ICTを理論と実践の両面から学べるよう、授業設計を工夫しています。では、実際の授業ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?

保育ICTに関する授業の実践例と学生の前向きな反応

授業では、実際の保育現場で導入が進むICTシステム「コドモン」を活用し、記録や連絡帳の作成、写真・動画の管理など、現場の業務をリアルに再現した演習を行っています。単なる操作方法の習得にとどまらず、「保育ICTが保育の質や子どもたちの成長にどう影響するか」といった視点も重視しているそう。また、学生たちはグループワークやディスカッションを通じて、現場での課題解決力やコミュニケーション力も養っています。

学生からは「現場で実際に使われているシステムを体験できて、自信につながった」「ICTを使うことで、子どもたちと向き合う時間が増やせるのはいいなと思った」など、前向きな声が多く寄せられています。

取材協力:筑波研究学園専門学校 こども未来学科(保育士・幼稚園教諭養成課程)
学科長 押手先生 / 副学科長 福田先生

保育ICTに関する知識を持った学生が求める職場環境

保育ICTに関する授業を実践した学生の就職先選びについて、興味深い調査結果があります。コドモンが2025年7月に実施したアンケートでは、「保育ICTを活用している施設に就職したい」と回答した学生は96.6 %*に達しました。

Q.保育ICTを活用している施設への就職を希望しますか

その理由として「学んだスキルをすぐに活かせそう」「業務が効率的で働きやすそう」といった声が挙げられています。この結果から、保育士養成校で学ぶ学生の職場選びにおいてICT環境は重要な要素の一つになっていることがうかがえます。
*:コドモン調べ(2025年7月)

ICT環境整備が保育施設の人材確保に与える効果

学生がICT環境を重視する傾向と、ICT導入による職場環境改善の効果を合わせて考えると、保育施設でのICT環境整備は人材確保に以下のような効果をもたらすと考えられます。

採用面での効果
ICTスキルを身につけた意欲的な学生にとって、学んだことを活かせる職場は魅力的に映ります。

新人の早期定着
ICT環境が整った職場では、新人が学校で身につけたスキルをすぐに活用でき、スムーズに職場に馴染むことができます。これにより早期離職のリスクも軽減されます。

既存職員の定着率向上
ICT導入により事務作業が省力化されることで、保育者が子どもと向き合う時間が増え、本来の保育業務にやりがいを感じやすくなります。

職場の魅力度アップ
「働きやすい環境が整った園」として認知されることで、経験者の転職時にも選ばれやすくなり、人材確保の競争力が高まります。

まとめ 保育士養成校の「今」を知ることが採用・人材戦略のカギに

社会全体でDX人材の育成が求められる中、保育士養成校では2021年頃から本格的なICTに関するカリキュラムが始まりました。現在では、実際の保育現場で使われるICTシステムを使った実践的な授業も行われています。ICTの実践授業を経験した学生の96.6%は「ICTを活用している園で働きたい」と回答しており、これからの職場選びには変化が見込まれます。

ICT環境が整った保育施設は、新卒採用での競争力向上、新人の早期定着、既存職員の働きやすさ向上など、人材確保の好循環が生まれます。保育施設でのICT活用は、日々の業務改善に加えて、採用活動や人材定着においても園の魅力を高める要素となりそうです。

保育士養成校の授業で活用できる保育ICT教材 無償提供プログラム

コドモンでは、未来の保育士とそれを支える教員のみなさまへの応援企画として保育士養成校を対象に、保育現場で実際につかわれているものと同じ機能を授業で利用できる「保育ICT教材無償提供プログラム」を実施しています。ご興味のある養成校のご担当者様は以下のフォームよりお問い合わせください。

資料送付の申請はこちら>>
https://submit.jotform.com/250720862814456

参考:
文部科学省┃教育課程コアカリキュラム改正(2019年)
文部科学省┃教育職員免許法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について(通知)(2021年)

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