保育園の登降園管理のデジタル化は本当に必要?ICT導入のメリットと活用のヒント

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朝夕の登降園時間は、保護者との連絡や出欠の確認、延長保育の時刻の記録など、多くの事務作業が重なる時間帯ではないでしょうか。
登降園時の対応をスムーズにしたいけれど、新しいシステムを入れるのはかえって混乱しないだろうか」 「新しいシステムを導入すると、操作に不慣れな職員でも使いこなせるか不安がある
園長先生からは、こうしたご相談や不安のお声をよくうかがいます。
この記事では、登降園管理をデジタル化することで「何が解決できるのか」「考慮するべき点はなにか」「どうすればそれを乗り越えられるのか」を解説します。

登降園管理のデジタル化が今、保育園に求められる理由

登降園管理のデジタル化は、単に神の作業をデジタルに置き換える「業務省力化」だけでなく、正確な利用状況の管理や子どもたちの安全管理の向上にもつながります。

デジタル化をしないことでのデメリット


毎日行う定型業務の中には、デジタル化をしないことで、本来、子どもたちや保育に充てたい時間を、想定以上に取ってしまうリスクが潜んでいます。

  • 時間的なロス: 毎日の出席確認や延長保育時間の集計、そして月末にはそれらを請求業務の書類に転記する作業に多くの時間がかかっているケースがあります。これらの時間の積み重ねは、職員の休憩時間や翌日の保育準備の時間を削ってしまっているかもしれません。
  • ヒューマンエラーのリスク: 手書きのメモや紙の集計表からの転記ミス、時刻の記入漏れなどは、万が一の場合、保護者からの信頼に関わるリスクを伴う可能性があります。デジタル化は、人が介在する作業を減らし、結果としてミスの発生リスクの軽減につながるといえます。
  • 「園児の所在確認」の遅延リスク: 特に急な予定変更があった場合など、朝会や保育の合間に保護者に電話で確認が取れず、一時的に園児の所在が確認できずに不安になるケースもあります。

「登降園管理システム」で変わること、デジタル化の3つのメリット

登降園管理システムを導入することで、具体的にどのような変化が起こるのか、導入によってもたらされる具体的なメリットを3つご紹介します。

メリット1:職員の「事務作業の手間」を大きく削減

登降園管理システムは、園での入室・退室の打刻(時間記録)をデジタル化します。
これにより、紙の出欠簿から時間を書き写したり、電卓を使って延長保育の時間を計算したり、Excelに手入力したりといった、手作業での集計作業が省力化されます

メリット2:延長保育の料金計算・請求業務が自動化で正確に

保育ICTシステムでは、保護者や職員が入力した打刻データに基づき、自動で延長保育料が計算・集計されます
月末月初の請求業務は、正確性が求められ、短期間の間に終わらせることが必要な業務です。デジタル化によってこの精神的な負担と、ヒューマンエラーのリスクが軽減されます

メリット3:緊急時の「園児の所在」が一目でわかる安心感

だれが今、園にいるか」「だれが帰宅したか」といった園児の状況が打刻データと連動し、リアルタイムでシステム上に反映されます。
日々の業務の中でも遅刻や欠席の情報が一目でわかる他、災害時や感染症発生時など、緊急事態が発生した場合にも、避難対応と並行して、すぐに園児の所在を把握できることは、職員の心理的な負荷を大きく軽減し、迅速な行動につながります。

災害時や緊急時の登降園管理や連絡システムの具体的な活用については、こちらの記事をご覧ください。
災害時を想定した保育ICTの活用例と押さえておきたいポイント

導入前に向き合うべき懸念点と、その解消に向けたヒント

登降園管理のデジタル化には多くのメリットがありますが、導入に際して不安を感じる方もいらっしゃると思います。ここでは、よくある園長先生が抱える3つの懸念と、それを解消するための具体的なヒントをご紹介します。

懸念1:「PCやスマホが苦手な職員が使いこなせるか?」

新しい仕組みを導入するとき、「操作に不慣れな職員もいるため、かえって負担が増えるのではないか」と心配される園長先生は多いです。
システム選びの際は、「だれでも直感的に使えるか」がポイントです。 「導入後に研修をしてITスキルを底上げする」のではなく、運用しながらでも慣れていける「職員の使いやすさ」を基準に選定することをおすすめします。導入事例などから実際の職員の声を確認するのもおすすめです。

懸念2:「保護者から『新しい運用への戸惑い』や『利用に対する不安』の声が出ないだろうか?」

登降園の際に保護者に操作をお願いするシステムの場合、新しい運用への理解を求めることが必要です。
保護者説明会や文書などで、デジタル化の目的を案内する場を設け、「職員の負担軽減」が「よりよい保育の実現」につながるということを伝えることが大切です。 また、保護者側のメリットとして「延長保育料が自動計算され、請求がより正確になる」「リアルタイムで園からの緊急連絡を受け取りやすくなる」といった点を具体的に説明すると、協力を得られやすくなります。

ICT導入後の保護者の満足度は非常に高い傾向にあります。実際に行われたアンケートでは、約99%の保護者が園選びで「連絡アプリ(ICT)」を重視しているという結果が出ています。また、コドモンが導入された施設の保護者の97.8%が「導入されてよかった」と回答、同じく97.8%がICTの継続利用を希望しています。こうしたデータからも、新しい運用に対する保護者の満足度も高く、保護者の協力を得て、スムーズに導入できることが期待できます。

懸念3:「導入コストに見合う効果が得られるか?」

初期費用や月額費用といったコストは、施設運営において重要な判断材料のひとつです。

コストを考えるときは、「削減できる業務時間」を「人件費」に換算する費用の考え方を持つことをおすすめします。 たとえば、職員の事務作業時間が1日10分削減できた場合、それが週5日、職員3名分だとすれば、1か月でどれだけの時間(人件費)が削減できるかが見えてきます。さらに、職員の業務負担の軽減や、正確な請求による保護者の満足度向上といった、金額には表れにくい価値にも目を向けることが大切です。

自園に合った「登降園管理システム」を選ぶための3つの視点

登降園管理システムは多種多様です。園の理念や規模に合った最適なシステムを選ぶための、3つの判断基準をご紹介します。

視点1:多機能の利便性 ― 登降園管理「だけ」で終わらないか?

登降園管理を導入した先で、将来的に「連絡帳」「欠席連絡」「指導計画」など、園の運営全体を省力化したいという要望が出てくるかもしれません。

システムを選ぶ際は、登降園管理だけでなく、他の機能(特に連絡帳や請求管理)との連携がスムーズに行えるかを確認することが大切です。最初からすべての機能を導入しなくても、あとからスムーズに追加できる仕組みだと安心です。

視点2:サポート体制 ― 導入後も「伴走者」となってくれるか?

どんなに優れたシステムでも、初期設定や操作方法で疑問が生じることはあります。

導入後のサポート体制が整っているかは、システムを長く、安心して使い続けるための重要な要素のひとつです。初期設定のサポートはもちろん、トラブルや疑問が生じた際に、電話やメールなどで気軽に、そして迅速に相談できる体制があるかを確認しましょう。

視点3:セキュリティ ― 大切な園児・職員情報を守れるか?

登降園管理システムは、大切な園児や保護者、職員の個人情報を扱います。

選定の際は、システムのプライバシーポリシーが明確か、通信は暗号化されているか、サーバーの管理体制は万全かなど、個人情報を守るためのセキュリティ対策がしっかりと講じられているか、具体的に確認するようにしましょう。

知っておきたいICT導入時に活用できる補助金

登降園管理システムは、近年、国が推進している「保育ICT」の主要な機能の一つです。国や自治体は、保育施設の業務省力化のためにICT導入を積極的に支援しています。

業務のデジタル化や省力化、保護者との連絡効率化を目的に、「補助金」や「助成金」が用意されています。積極的に情報収集を行い、これらの支援制度を活用することで、コストの懸念を大きく軽減することができます。

補助金や助成金について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
保育施設が使える補助金をまとめて紹介 ~安全対策・人材確保・業務の省力化に向けて~

導入園の声に学ぶ。登降園管理のデジタル化をした事例

多くの園では、登降園管理のデジタル化をきっかけとして、連絡帳や請求など、他の業務もシステムで連携して行ったことで、相乗効果が生まれたという声が聞かれます。

実際に登降園管理のデジタル化をきっかけに他の業務もICT化した園の声をご紹介します。

  • 「登降園の記録が自動で延長保育料に反映されるようになったことで、月末の請求作業にかかる時間が半分以下になり、主任の残業時間が減った」
  • 「登降園管理と同時に電子連絡帳を導入したところ、午睡チェックなどの連絡事項も連携でき、園と保護者間の情報共有がより密になった」

このように、複数の業務をICT化し、園の運営全体を支える一つの仕組みとして活用することで、登降園管理システムがより大きな効果を発揮することにつながります。

実際に登降園管理のデジタル化を進めた園の具体的な導入のきっかけや、成功事例について、さらに詳しくご覧になりたい方は、こちらをご確認ください。
登降園管理機能の導入事例

まとめ:登降園管理のデジタル化は、よりよい保育環境を実現するための「手段」

「保育園 登降園管理」のデジタル化は、それ自体がゴールではありません。職員の働きがいを高め、保護者との信頼関係を深め、そして最終的に施設の安全管理の向上や安定的な運営につながる、数ある「手段」のひとつです。

デジタル化のメリット、懸念点、そして選定の視点を総合的に検討し、園にとって最適な選択をするための助けとなれば幸いです。

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