令和7年3月に、こども家庭庁から「放課後児童クラブDX推進状況に関する調査結果」が発表されました。調査が行われた背景には、学童保育の業務省力化を推進する国の動きがあります。この記事では調査結果をわかりやすく解説していきます。
放課後児童クラブ(以後、学童)は、働く保護者を支える社会インフラとして重要な役割を果たしている一方で、その運営を支える職員の業務負担が大きいのが現状です。国はこの状況を改善し、学童の運営を持続可能なものにするために、デジタル技術による改善を推進しています。
「放課後児童対策パッケージ」(令和6年度補正予算)にも、学童のICT化を進め、職員の業務負担を省力化することが主要な目的として盛り込まれています。
さらに、こども家庭庁の令和8年度予算概算要求では、学童のICT化推進のための予算枠が増えており、今後もICT導入への支援が継続・強化される見込みであることがわかります。
今回の調査結果によると、業務支援ICT*を導入している学童は約40%です。公立保育所においては約60%が保育ICTシステムを導入**していることを見ても、学童ではまだ十分なICT化が進んでいる状況ではないといえそうです。
*業務支援ICTは、「情報通信技術(ICT)」を使って企業や組織の仕事(業務)を効率化・支援することを指します。学童では、施設の運営や子どもたちの管理、保護者との連絡をスムーズにするために使われています。
**公立保育園を保有している1,429自治体のうち、保育ICTシステムを導入している市町村は854自治体(2025年10月コドモン調べ)
特に負担が大きいと感じている業務については、「保護者への連絡」「保護者からの欠席・遅刻の受付」「利用申請の管理」と回答している方が多い結果となり、学童では「保護者との連絡」に負担が集中していることがわかります。
また多くの学童では、事務手続きのほとんどが紙で行われています。この「紙と手作業」が、職員の業務負担を増やしている大きな原因といえるでしょう。
すでにICTを導入している学童が使用している機能は、「保護者への連絡」「入退室の記録・管理」「保護者からの欠席・遅刻の受付」が特に多い結果となりました。
学童では、児童の安全確保と保護者とのコミュニケーションを改善するための機能の導入が優先されており、この二点がICT導入の大きな動機になっていることが見えてきます。今後はその他の業務についても、広くデジタル化が進んでいく可能性があります。
また、ICTを導入していない施設に対して「導入の課題」を聞いたところ、「職員がデバイスやアプリの操作に苦手意識がある」が半数を占め、「どのような業務支援システムを選べばよいかわからない」「システム導入に必要な予算(初期費用)の確保ができない」「月々のシステム利用料などランニングコスト(月額費用)を捻出できない」が上位に挙がりました。
ITリテラシーに課題があることや、ICTシステムを選択する際の情報不足、導入・運用のための財政的な支援が必要であることがうかがえます。
令和7年3月の調査結果が示すように、放課後児童クラブのDXは着実に進んでいますが、まだまだICTを導入していない施設も多く大きな改善の余地があることが分かります。
「時間が足りない」と悩む職員の負担を軽減し、持続可能な学童運営を実現するためには、ICT化が業務省力化の重要な鍵となっています。
国の支援が受けられるこのタイミングで、まずは「保護者との連絡」のデジタル化から検討されることをおすすめします。
ICTを導入することで省力化できる業務の具体例や、ICT導入のメリットは、こちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
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参考資料:
放課後児童クラブDX推進状況に関する調査結果
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