今回お話を聞いた方
新人教諭として働き始めた頃のことは、今でも鮮明に覚えています。右も左もわからない私を見て、「あんなに若い先生で大丈夫なのでしょうか?」と保護者の方から園にご心配の声をいただきました。
そんなとき、当時の園長先生が「彼女は、今成長しようと頑張っています。だから、もう少し見守ってくれませんか」と説得してくれて。その言葉に背中を押されて、園長先生や先輩方と一緒に、任された業務を一生懸命頑張りました。1年後には、保護者の方からも「緩子先生で良かった」と言っていただけて、本当に嬉しかったですね。今でも心に残る、大切な思い出です。
幼稚園に通っていた頃の担任の先生が、本当に素敵な方でした。その先生との出会いが、私の原点になりました。生まれて初めて持った夢が、幼稚園の先生だったんですよ。
それと、私は小さい頃から子どもが大好きで、近所に赤ちゃんがいるご家庭があり、よく遊びに行っていました。子どもたちの笑顔を見ていると、私まで自然と笑顔になれるんです。そんな素敵な時間を、仕事にできたら幸せだろうなと思っていました。
実は、入職してすぐに先輩から笑い方を注意されました。「あなたの笑い方は、声が大きすぎますよ」って。笑顔は自分の一番の魅力だと思っていたので、正直すごくショックでした。
でも今になって思うと、保護者の方の中にも当時の私の笑い声を耳障りに感じる方はきっといらしたと思います。声の大きさはもちろん、所作や表情一つひとつにも、相手を思いやる気持ちが必要なんですよね。学生の頃の私が、気づかなかった大切なことを、社会に出てからたくさん教わりました。
新卒で入った幼稚園では、14:00には子どもたちが降園します。次第に、「もっと子どもたちと一緒に過ごしたい。朝から夕方まで子どもたちの成長を見守ることができる保育園で働きたい」と思うようになりました。そのときに、働いていた幼稚園が閉園することになり、保育園に転職しました。
保育園では、本当に朝から夕方までずっと子どもたちと一緒に過ごせるんですよ! 朝はちょっと機嫌が悪かった子が、お昼寝のあとにはすっきりした表情を見せてくれたりして。一日の中での子どもたちの小さな変化に寄り添えることが、とても嬉しかったですね。子どもたちの表情や仕草から、「今、この子は何を感じているのかな」と想像を膨らませられる日々は、本当に楽しいです。
そうですね……。保育者となかなか信頼関係を築けない子がいたんです。0歳で入園してしばらくは、不安からかミルクもなかなか飲めないくらい繊細な子でした。
彼女が初めてミルクを飲んでくれたときは、保育者みんなで拍手を送りたいくらい嬉しくて。でも、大きな音を出したり歓声をあげたりすると、この子はきっと驚いてしまうだろうと思い、その場では静かに見守り、保育者たちは事務所へ戻ってから万歳をして喜びました!
彼女は1歳を過ぎた頃から少しずつ心を開けるようになって、お友だちとおもちゃを貸し合いっこしながら「楽しいね」と笑顔で遊ぶようになったんです。そういう成長の瞬間に立ち会えることが、この仕事の何よりの喜びです。
今は、園長業務を学んでいる最中です。事務仕事が増えて、子どもたちと関わる時間は少し減ってしまいました。園長になりたての5月、6月頃は、正直、もっと子どもたちと一緒にいたくてウズウズしていましたね(笑)。
でも、すてきな園長先生たちとの出会いが今の私をつくっているように、私もパートナー(私たちの法人では職員をパートナーと呼びます)の皆さんや子どもたち、保護者の方々に寄り添える園長になりたいんです。そんな思いで、今は経営のことや地域との連携など、新しいことをたくさん学んでいます。
たくさんのすてきな先生との出会いがあったのですが、特に心に残っているのは、やはり最初に勤めた幼稚園の園長先生ですかね。当時の園長先生が若かった私の成長を見守ってくれたから、今も子どもたちと関わる仕事を続けられていると思っています。
また、次に勤めた保育園の園長先生との出会いも私を大きく変えてくれました。実は最初の幼稚園で笑い方を注意されてから、ちょっぴり自信をなくしていました。でも、その園長先生は「あなた、いい笑顔してるわね!」と褒めてくださって。その方自身も、大きい声で笑うんです(笑)。まわりへの気配りは大切だけれど、自分らしく元気に笑うのもいいんだなって。その人らしさを認めてくれる園長先生との出会いが、私にとってはとても救いになりました。
今勤めている園の、前園長も私の憧れの先生です。パートナーの話をじっくり聞いてくれたうえで、子どもたちの安全や私たち保育者の成長のために伝えないといけないことは、しっかり伝えてくれる。目指すべき園長のあり方を間近で学ばせてもらいました。
私も、パートナー一人ひとりのよいところを見つけて、その人らしさを認められる園長でありたいです。そして、どんなことがあってもパートナーのことは私が守る。自分が先輩たちから守られて頑張ってこれたように、パートナーにも安心して子どもたちと向き合ってほしいと思っています。
そうなんです。私がしてもらったことをパートナーたちに返せたらいいなと思って。園長という立場は、保育に入る時間は減ってしまいますが、また違った形で子どもたちや保育に関わることができます。
パートナーが「やってみたい!」と思うことを支える縁の下の力持ちでいたいですし、自分も笑顔で、みなさんのそのままを認めて、受け止められる園長でありたいです。
はい。子どもたちにとって、最初の大切なコミュニティは家族です。その次が保育園、そして地域社会へと広がっていくのだと思います。
私たち保育園は、子どもたちと地域社会をつなぐ架け橋でありたいです。お祭りに参加したり、地域の方々と交流する機会を作ったり。そうやって少しずつ世界を広げていくことで、子どもたちの中で「私も地域の一員なんだな」という気持ちが育っていくと考えています。そのための入口として、まずは園長の私が外に出て地域の方々と交流し、関係性を築いています。
そうなんです。私たちの法人では年に1回海外の施設見学や、多様な文化を体験するための海外研修があります。これは、役職や所属に関係なく応募できます。フィリピンのセブ島から船で2時間ほどの島に、法人のパートナーたちと一緒に訪問しました。電気もガスもない環境でしたが、そんな中でも子どもたちの成長を願って一生懸命働いている方々にお会いし、本当に心を打たれました。
現地のスタッフに「なぜ、こんなに大変な環境で働けるのですか?」と聞いたところ、「子どもたちが成長する姿が美しくて、それが生きがいだから」とおっしゃっていました。私もまさにそう感じているんです。あのような大変な環境でこれだけ頑張っている方々がいるなら、私は日本でもっと頑張れるはず! フィリピンの方々に、自分のすべきことを気づかせてもらったような、心を支えてもらっているような気がして、パートナーシップを感じた瞬間でした。
それから毎年、私たちの園では「SDGs活動」としてフィリピンへの支援物資を集めて送り、オンライン交流もしています。法人全体で、SDGs活動に取り組んでいて、各施設が自分たちにできることは何かを考えてさまざまな活動をしています。私たちの園では引き続き、フィリピンへの支援と交流を実施しながらパートナーシップを深めていきたいと考えています。
保育士は、働く中でどんどん専門性が高まっていく仕事です。私自身、園長になった今でも日々学び続けています。大変なことも多いですが、それ以上に子どもたちに感動させられることが1年に何度もあって。そのたびに私は泣いちゃうから、何か行事があるたびに職員のみんなからは「園長先生、ハンカチ持ちましたか?」って確認されます(笑)。でも、子どもたちから感動をもらって涙を流せる仕事って、なかなかないと思うんですよね。
そういう経験を重ねていくと、自分も心が豊かになれるというか。子どもたちが成長するのはもちろん、私たち大人も共に成長できる。保育士は、そんな素敵な仕事だと思っています。
(取材・文:仲奈々、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)
神宮司先生が働いている園
施設名:レイモンド南蒲田保育園
形態:認可保育園(69名)
設立:2011年
所在地:東京都大田区南蒲田2−16−2
※2024年12月2日時点の情報です
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