今回お話を聞いた方
この春、とても嬉しいことがありました。今の園には開園時からいますが、そのときに0歳児クラスにいた子たちが中学生になって、制服姿で会いにきてくれたんです。大事に抱っこされていた赤ちゃんたちがすくすくと成長した姿を見せてくれて……感無量でした。こういうときにとてもやりがいというか、保育士をしていてよかったと大きな喜びを感じます。
そうですね。これは土地柄もあると思うのですが、当園には外国からこられたお子さんも少なくありません。すると、最初は保護者の方やお子さんと言葉が通じない、ということがあります。翻訳機やアプリを使ったりと工夫していますが、保育の細かい内容が伝わりづらいことは確かです。
また、やはり文化や習慣が違うので、例えば食事ひとつをとっても子どもが慣れるまでは、なかなか大変です。でも、逆にいえば、やりがいがあると思いますし、子どもは柔軟なので必ず慣れていきます。
もっとも大切にしているのは、「子どもが主体的に遊び込める環境づくり」です。
子どもの遊びは、職員の環境づくりによってかなり変わってきます。例えば子どもの年齢や発達に合わせておもちゃを準備したり、遊びを提供したり、導線を考えたり……、常にどうしたら子どもが遊び込めるかを考えてクラスをつくっています。子どもはどんどん成長していくので、年度の前半と後半で同じということはありません。
生き物の飼育をしたり、SDGsについて学んだり、そのときどきでさまざまなことに関心が持てるよう工夫しています。
はい。これまでにザリガニ、メダカ、スズムシ、カブトムシなどを育ててきました。お昼寝のときに、スズムシの音色が響いたときもあって、すごく風情があってよかったですよ(笑)。
今は、カブトムシを幼虫から育てています。私が霧吹きで土に水をかけて湿らせたり、土をふるいにかけてフンをとったりしていると、興味のある子が寄ってきて「やってみたい!」と少しずつ挑戦しています。当然、虫が苦手な子もいますから、お世話を無理強いすることはありません。やりたい子だけが参加するという感じです。
身のまわりにあるものを使って、いろいろな取り組みをしています。例えば、ペットボトルのキャップを集めて同じ法人が運営する障がい者支援施設に送ったり。障がい者支援施設で異物除去や洗浄が行われてリサイクルされるのです。
そのほか、不要になった画用紙の切れ端を小さく破って水のりで再生したり、お菓子などのパッケージについているFSCなどのマークを確認して、その意味を勉強したりしています。
当法人内で新しい園の立ち上げがあり、前園長がそちらへ異動になったのをきっかけに「園長をやってみないか」との打診をいただきました。今の園では各年齢の担任を9年、そのあと主任を1年経験したあとでした。
それで、すぐに「はい。ぜひやらせてください」とお返事しました。私でいいのだろうかと思いましたが。でも、あまり迷ったりしない性格ですし、与えられた役割をしっかり果たしたいと思うほうなんです。
予想通り、とても大変な仕事だと思いました。園の子どもと保護者、職員、運営……いろいろなところに課題と責任がありますが、試行錯誤しながら、よりいい園を目指していくのは、とてもやりがいがあります。まだ始まったばかりですから、これからいろいろな挑戦をしたいと思っているところです。
一番は、子どもたちのためにも、安定した運営のためにも、保育士などの職員が働きやすい環境を提供しながら、しっかり育成していくことです。
当然のことですが、職員にもそれぞれの生活があり、特に子育てをしていると時間の調整が難しくなります。子どもの運動会や学芸会などの予定があって休みたいときもあれば、急に子どもが風邪をひいて休まなくてはいけないときもあります。ですから、職員のシフトの組み方も気にかけています。
ひとつは経営面についてもっと勉強して、少子化が進むなかでも安定的な運営ができるよう工夫していくことです。もうひとつは、在園児の保育だけでなく、地域の子育て中の方の交流の場として園開放をしたり、園の企画としていろいろなことをやっていきたいと思っています。まだ手探り段階ですが、保育のプロとして地域に貢献したいと思っています。
いいえ、実は違うんです。大学在学中は陸上競技をやっていましたが、卒業後は別のことをしようと考え、母がホームヘルパーの仕事をしていたということもあって、最初は介護に関心を持ちました。それで大学在学中にホームヘルパー2級の資格を取得し、重度障がい者施設でボランティアをしたんですね。
そのときに介護だけでなく子育てにもさまざまな課題があることを知り、それらを解決するような仕事をしたいと思うようになりました。
はい。その後、社会福祉士の資格を取得し、ちょうど制度ができた頃に仲間とともにNPO法人を立ち上げ、学童保育や子育て支援を始めました。
ただ、当時、私にはすでに子どもがいましたが、母として子育てをすることと、大人数を預かってプロとして保育をすることは全然違うと思ったんです。そこでNPOと飲食店で働きながら、保育士資格をとるための勉強を始めました。
NPOには他の人たちもいて「またいつ参加しても大丈夫だから」と言ってもらったので、資格取得後は保育園に就職しました。この最初の園ですべての年齢のクラス担任を経験したあと、縁があって今の保育園に転職したんです。
保育園で過ごす0〜6歳までの時期は、人としての土台をつくる大切なときです。どんな人と、どんなふうに関わったのかによって、人生が変わることもあるかもしれません。子どもたちにとって大切な時期であること、そんな時期に保護者の方が私たちを信頼してお子さんを預けてくださっていることを思うと、背筋が伸びる思いがします。ですから、保育士志望のみなさんも、ときにプレッシャーを感じるかもしれません。
でも、保育はとても楽しい仕事です。子どもたちはかわいいし、自分の努力で専門性を高めていくことができるし、そのうえ個人的な趣味や特技、好きなことを生かせます。私自身は生き物が大好きで、自宅で犬、ウサギ、インコ、ウズラ、ハムスター、ザリガニ、カマキリ、カブトムシなどのさまざまな生き物を飼育してきましたが、それを保育に生かせています。
子どもと関わることが好きな人、子どもたちと一緒に成長していきたいという人、ぜひ一緒に保育しましょう!
(文:大西まお、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)
水上先生が働いている園
施設名:キディ石川町・横浜
形態:認可保育園(60名)
設立:2013年
所在地:神奈川県横浜市中区吉浜町1-6
※2025年4月16日時点の情報です
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