子どもに「いや」と言われたら、心の中でガッツポーズ【安蒜萌美先生】

すてきな園長先生 保育

今回お話を聞いた方

安蒜萌美先生
出身地:東京都
保育園勤務歴:16年
園長先生歴:7年半
趣味:旅行、料理
好きな手遊び歌:「やさいのうた」

「楽しい」だけではなかった保育の現場。支えになったのは「子どもたちの成長」

安蒜先生が保育士を目指したきっかけを教えてください。

小さい頃からお人形のお世話が大好きで、子どもと関わる仕事に就きたいと思っていました。高校3年生で進路を考えたとき、保育士か助産師かで迷ったんです。どちらも子どもと関わる仕事ですが、特に保育士なら、子どもたちの成長を日々そばで見守れるんじゃないかなと魅力を感じて。高校卒業後は、保育士の資格が取得できる専門学校に進学しました。
ただ、保育士になりたての頃は、「楽しい」よりも「大変」と思うことが多かったですね。

どんなところが大変だと感じたのでしょうか?

それまでの私は、ただ「楽しい」という気持ちだけで子どもたちと関わっていたのですが、保育士になるとそれだけではいけません。たとえば、子どもたちをお散歩に連れて行くにも、おもちゃを用意するにも、保育士が取る一つひとつの行動すべてに「なぜそうするのか」という意味が込められているんです。

また、保育士になって私が最初に受け持ったのは、1歳児クラスでした。1歳というと、言葉で気持ちを伝えることが難しい年齢です。そのため、「いや」「やめて」という思いを、「叩く」「噛む」といった行動で表現することがあります。

専門学校で学んだから、目的を持って保育に当たる重要性も、発達や特性に合わせて子どもたち一人ひとりと向き合う大切さも、頭ではわかっていました。でも、実際の現場に出ると、その難しさをひしひしと感じました。先輩保育士が当たり前のようにこなしている姿を見ては、「私もいつかできる日が来るのだろうか……?」と不安でした。
でも、そんな私を支えてくれたのは、やっぱり子どもたちの姿でした。

子どもたちのどんな姿に支えられていたのでしょうか。

歩けるようになったり、言葉で気持ちを伝えられるようになったりと、日々成長していく姿です。
たとえば、電気のスイッチやエレベーターのボタンなど、とにかく「ボタン」を押すのが好きな子がいました。その様子を見て、「好きなことを楽しみながら、発達につなげられる遊びができないか」と考えて。それから、その子の成長や発達に合わせた玩具を選んだり、つくったりすることを考えるのが、すごく楽しくなりました。

その後、別の園に異動されたとうかがいました。

はい。最初の園には3年半ほど勤めました。その後、同じ運営会社で新しい園が開園することになり、「来月から新しい園に異動です」と言われたんです。でも、最初の園で一緒に働いていた先生たちからは本当に学ぶことが多くて。「まだ一緒に働きたい」という気持ちがあり、正直戸惑いました。

では、何が決め手になったのでしょうか。

「新しい園にも、子どもたちがいる」ということでした。目の前の子どもたちだけでなく、すべての子どもたちによい保育を届けたい。その思いは、どの園にいても変わらないはずだと思って、異動を決めました。

異動先の園では、また新しい子どもたちとの出会いがありました。一から関係を築いていく中で、改めて気づいたのが「信頼関係」の大切さだったんです。

子どもの「いや」は、安心している証拠

「信頼関係」とは、具体的にどういうことでしょうか。

保育士になりたての頃は、「今日初めて歩けました」「言葉が増えてきました」と、子どもの成長を保護者の方と一緒に喜べることが、一番のやりがいでした。でも年数を重ねるうちに、少し変わってきて。たとえば、子どもが「いや」と言ってくれた時に、「やった!」と感じるんです。

「いや」と言ってもらえると嬉しい?

はい。入園したばかりの子って、先生の言うことを素直に聞いてくれる場合が多いんです。保護者の方から「家では全然言うことを聞いてくれなくて……」と聞いても、保育園ではとてもおりこうさん。でも、それって「いい子」というより、慣れない場所で緊張しているだけなんですよね。

それが、信頼関係ができてくると変わるんです。「この先生なら、本音を言っても大丈夫」と感じてくれるようになる。そうすると、「お散歩行かない!」「これ食べたくない!」と、自分の気持ちを出してくれるようになります。その瞬間、「やった、この子がついに本音を言ってくれた」って、心の中でガッツポーズしています(笑)。

その後の対応は大変そうですね。

それはもう、大変です(笑)。でも、我慢ばかりしていたら、子どもたちにとって保育園が楽しい場所になりません。「いや」と言えるのは、安心している証拠です。「いや」を受け止めながら、納得できるポイントを一緒に見つけていく。それも、保育の大事な目的のひとつだと思っています。

信頼関係を築くために、意識していることはありますか。

その子が好きなものに興味を持つこと、ですかね。たとえば、お気に入りのキャラクターの話をしたり、好きな遊びを一緒にしたり。すると、どんどん話をしてくれるようになるんです。
大人だって同じですよね。自分の好きなものに興味を持ってくれる人がいたら、嬉しいじゃないですか。

まだ言葉が話せないお子さんの場合は、どうしていますか?

とにかくたくさん話しかけます。お散歩中に「鳥さんが飛んでるね」「お花が咲いてるね」って、身の回りのものを一つひとつ伝えながら、反応を見るんです。声を出したり、手を伸ばしたりしたときに、「この子はお花が好きなんだな」「赤色に興味があるんだな」ってわかってくる。そうやって少しずつ、その子のことを知っていく。言葉が話せなくても、ちゃんと「対話」はできるんです。

職員の声も大切に、みんなで正解を見つけていく園にしたい

安蒜先生が園長になったきっかけを教えてください。

当時の園長先生が退職されることになり、「次の園長をやってみないか」と声をかけていただいたことがきっかけです。ただ当時私は保育士4年目で、「まだ早いんじゃないか」と思いました。

それでも引き受けようと思ったのはなぜでしょう。

その園長先生の保育は、子ども一人ひとりに寄り添うことをなにより大切にしていて、まさに私が理想とする保育そのものでした。園長が変わると、園の方針も変わることがあります。だから、自分が引き継いで、その先生が大切にしてきたものを守りたいと思ったんです。

具体的に、どんな保育を引き継ぎたかったのか教えていただけますか。

たとえば、スプーンやフォークの持ち方。食事と同時に練習すると、子どもは「食べること」と「持ち方」の両方に集中しなければなりません。それだと、食事が「練習の時間」になってしまって、食事そのものにはなかなか集中できないですよね。そこで、食器の持ち方は、おままごとや砂場遊びを通じて練習をする。そして、食事の時間は、料理の味や、みんなと一緒に食べることを楽しむんです。

おもちゃや日々の遊びを通じて、子どもたちの成長をサポートする。そんな保育方針がすごく素敵だな、続けていきたいなと思って、園長になることを決めました。

実際に園長になってみて、いかがでしたか。

前任の園長先生から学んだことをひとつずつ実践していくうちに、自分なりのスタイルも見えてきました。
数年間園長を経験してみて、私が特に大切にしたいと思ったのは、職員の声をしっかり聞くこと。「こうしたい」「こんなことをやってみたい」という意見が出たら、「やってみよう」「失敗しても大丈夫」と伝えるようにしています。安心感がないと、新しいことに挑戦するのは難しいですからね。

トップダウンで決めるのではなく、「職員が働きやすい環境ってなんだろう」「子どもたちにとってよい保育ってなんだろう」と、みんなで話し合いながら答えを見つけていく。園長として、そんな園をつくっていきたいと思っています。

保育士の仕事の魅力を、ひとりでも多くの人に知ってほしい

最後に、保育士を目指している方へメッセージをお願いします。

私自身、保育士になりたての頃は、「大変」「難しい」と思うことばかりでした。でも、16年続けてきた今、心から「この仕事を選んでよかった」と思っています。

保育士の仕事って、子どもや保護者、同僚の先生たちなど、本当にたくさんの人と関わるんです。嬉しいことも、大変なことも、みんなでわかち合う。その中で、保育士としてだけでなく、人としても成長できる。それが、この仕事の魅力だと思っています。

そんな保育士の仕事の魅力を、ひとりでも多くの人に知ってほしい。そして、「やってみよう」と一歩踏み出してくれたら、すごく嬉しいです。

(文:仲奈々、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)

安蒜先生が働いている園
施設名:ぽけっとランド本郷保育園
形態:認可保育園(89名)
設立:2021年
所在地:東京都文京区湯島2-20-10アダチビル2、3階

※2025年12月17日時点の情報です。現在安蒜先生は副園長先生として勤務されています

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