今回お話を聞いた方
幼稚園のときの先生への憧れです。とても優しく寄り添ってくれる先生だったので、「こんな先生になりたいな」という思いが成長してからもずっと自分の中に残っていました。
高校卒業後の進路を考えたとき、大学という選択肢も悩みましたが、保育士という夢を叶えるのであれば専門学校が一番の近道だと思えたので、生まれ育った広島の専門学校に進学。そこで3年間学んだあと、新規園で保育士として働き始めました。
私の場合は認可・認証保育園を運営する学校法人グループに新卒採用されたのですが、入社時に配属先を第五希望まで出せるんですね。第一希望はスポーツに力を入れている保育園でしたが、第二から第五希望まではすべて新規園で記入欄を埋めました。自分でもうまく説明できないのですが、「イチから作り上げたい」という気持ちが強かったのかもしれません。
もちろん立ち上げの準備は苦労がたくさんありましたが、新人だったのですべてが初めての経験でしたし、職員同士で仲良くなれたおかげでなんとか乗り越えることができました。その新規園で保育士として1年間勤めたあと、2年目からは入社時に第一希望で出していた「スポーツ×保育」の特色を持つ保育園への異動が叶いました。
体を動かすことはずっと好きだったので、中学ではバドミントン部、高校ではボート部で活動していました。ボートを始めたきっかけは単純で、中学のときの体力測定で「あなたに向いているスポーツはボートと登山」という結果がなぜか出たんですね。入学した高校にたまたまボート部があったので、そのことを思い出して興味本位で入部しました。でも、いろんな大会にも出場できましたし、体だけでなくメンタルもすごく鍛えられたのでいい経験になりましたね。

私が園長として大切にしていることは2つあります。ひとつは、先ほどお話ししたように園の方針でもある、スポーツを通じて子どもたちの育ちを支えていくことです。普段の保育ではサッカーと体操をそれぞれ週に1〜2回ずつプログラムとして実施しています。
季節の行事ではサマーキャンプで登山を行います。スノーキャンプでの自然にふれる宿泊体験も毎年行っています。スノーキャンプは、3歳児クラスは雪遊びがメインですが、年中以上のクラスでは3泊4日でスキーをみっちり学びます。4・5歳児はみんな上達が速くて、あっという間にスイスイ滑れるようになるんですよ。
こうした日常の保育でも行事でも、私自身が意識しているのは、それぞれの子どもの発達段階に合わせて、失敗と成功を繰り返しながらスモールステップで成長していけることです。園長として「心・技・体・知」をどう育んでいくのかは常に自分の中で問い続けていますし、「この園で育みたい“心”ってなんだろう?」ということを職員同士でも都度、話し合うようにしています。

もうひとつ、園長としての私自身に大きな影響を与えたのが、国際バカロレア(IB)に取り組んできた経験です。導入当初はIBの水準(教育内容や教師の質、施設環境などにおいて、厳しい国際水準)の高さに正直なところ、何度も心が折れそうになりました。これまで自分が当たり前だと思っていた保育の考え方を問い直される場面も多く、戸惑いの連続でした。
ただ、その過程を通じて、子どもの成長をひとつの見方だけで判断するのではなく、さまざまな視点から捉える意識が育ち、保育士としての自分自身の成長にもつながりました。
今は、子どもたちがもともと持っている主体性や表現したい気持ちを大切にしながら、「どう関われば、その子らしい力が伸びていくのか」を考えることを、日々の保育の中で意識しています。
今の保育園で主任、副園長を経て、11年目の2025年度から園長に就任しました。園長の辞令を受けたのは2024年の冬でした。自分から希望を出していたわけではなかったので、しばらくは「自分に園長が務まるのだろうか」と不安に駆られていましたね。実際に園長になった今も、子どもたちの命を守ること、それから職員の人生を預かっているという責任の重さを強く感じています。
ポジションが変わると、求められる役割も大きく変化します。主任だった頃は保育全般をしっかり見ることが業務のメインでしたが、副園長となると園全体の運営や経営も視野に入れて業務にあたることになります。さらに園長になると、園全体の運営に加えて職員のマネジメントも考えなければなりません。まだ園長になって1年未満ですからまだまだ不慣れではありますが、周囲の職員たちの力を借りながら日々どうにか頑張っています。
普段から、できるだけ私のほうから話しかけるようにしています。必ずしも保育に直接つながる話じゃなくても、プライベートなことでもいいのでなにかしら話すきっかけをつくって声をかける。「◯◯先生、いつもと少し様子が違うかも?」と感じたときも、放っておかずになるべく早い段階で声をかけて話しますね。
昔から、他人の表情をよく見て「今、この人はこういう気分なのかな」といろいろ考えるタイプだったので、園長になる前から自然とそういう行動は取っていたように思います。

私は園長という立場ではありますが、上からみんなを引っ張っていくタイプのリーダーではないんですね。縁の下の力持ちではないですが、職員の先生方とみなで意見を出し合いながら、園が進む方向性を決めるというスタンスを今後も心がけていきたいと思います。
その上で、自分たちの園の特色を活かした保育を実践していくことも大事にしていくつもりです。私たちの保育園はスポーツに力を入れていますから、インストラクターの先生とも連携する場面が多いんですね。保育士とスポーツの専門家では、子どもを見る視点もやっぱり違ってくるのでそれがおもしろい部分でもあります。保育者、インストラクター、それから保護者の目線と、ひとりの子どもをさまざまな視点から見ることで、その子の成長を伸ばす最適なアプローチを見つけていけたらと思っています。
たまに誤解されてしまうのですが、スポーツに力を入れている園だからといってスパルタで厳しく教えているわけではないんですよ(笑)。スポーツを通じて子どもたちに楽しく成長してもらうことが一番の目標ですので、それぞれの子どもの発達段階に応じた声がけや指導を意識しています。
そういう意味では、子どもたち同士の対戦などでは勝敗もきちんとつけます。負けを通して悔しい気持ちを感じたり、その悔しさを次につなげていったりすることも大事な経験ですから。日々の成長や悔しさを糧にしながら、その子が大人になってやりたいことが見つかったときに、心・技・体・知のスキルを使って自分の道を自分で切り開いていけるようになってもらえたらと思っています。
私は保育士という職業を選んだことで、「自分自身が成長できた」と実感できる瞬間がたくさんありました。もちろん、どんな仕事でもそういう実感は得られるのかもしれませんが、子どもたちの成長を感じながら自分も一緒に成長できるのは保育士だからこその素敵な部分なのかなと思っています。

(文:阿部花恵、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)
河原先生が働いている園
施設名:キッズ大陸フロンタウン生田園
形態:認可外保育施設(90名)
設立:2023年
所在地:神奈川県川崎市多摩区生田1-1-1
※2025年12月10日時点の情報です
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