子どもに「みんな仲良く」と言う前に、まずは大人が手本を見せる【田中雅世園長先生】

すてきな園長先生 保育

今回お話を聞いた方

田中雅世(園長)
出身地:北海道札幌市
保育園勤務歴:認可外保育園、認可保育園4園を経て起業
園長先生歴:13年目
趣味:旅行。先々週、宮古島から帰ってきたばかり!
好きな手遊び歌:「かおかおどんなかお」

保育士を目指した原点は「優しいお姉さん」への憧れ

田中先生が保育士を目指したきっかけを教えてください。

周りに年上の男の子が多い環境で育ちました。年下の女の子って、年上のお兄ちゃんたちにかわいがってもらえるイメージがありますよね。でも私の周りはそうでもなくて(笑)。それがきっかけで、「私は年下に優しくできるお姉さんになりたい」と思うようになりました。

その後、4歳で保育園に入りました。自分よりも小さい子と関わる時間が楽しくて、嬉しくて、積極的に一緒に遊んでいたんです。そしたら、すごく慕ってくれるようになって。でも、保育園の先生には敵わないじゃないですか。それがちょっと悔しくて(笑)。その頃には「将来は保育園の先生になる」と言っていましたね。

具体的に進路を考え始める中学生の頃には、「保育について学べる学校に行きたい」と考え、福祉科のある高校に進学しました。

着実に、夢に向かって進んでいたのですね。

はい。高校では保育士の資格は取れませんが、介護系の資格取得は可能です。介護施設で実習をして、ホームヘルパー2級の資格を取りました。

では、保育士の資格を取ったのは、高校を卒業してから?

はい。ただ、家庭の事情で高校卒業後は進学ではなく、就職を選びました。入社したのは、保育とは関係のない、美容系の会社。でも、いくら時間が経っても「子どもと関わりたい」という気持ちはまったく変わりませんでした。ただ、保育士の資格を持っていないから、どうしたらいいのかわからなくて。そこでまずは、近所の認可外保育園にお伺いして、「なんでもやるので、雇ってください!」と(笑)。最初は、「資格がないなら難しい」とお断りされたのですが、何度か思いを伝えたところ「田中さんには根負けしたよ」と、バイトとして雇っていただけることになったんです。

すごい熱意ですね。

実際に働き始めたら、介護の資格が役立つ場面もあって。支援が必要なお子さんの担当を任せていただいたりと、資格がない中でも楽しくお仕事していました。でも、当時の園長先生から「この仕事を続けるなら、保育士の資格は取った方がいい。資格があれば担任も持てるし、できることの幅が広がるよ」と言われたんです。そこで、毎月の収入をできるだけ貯金して、高校卒業から4年目に保育専門学校に進学しました。

周りの人達よりもスタートが遅い分、専門学校に通いながら、休日や長期休みは児童デイサービスでバイトして、学びながら実務経験も積むようにしていました。そんな背景もあったから、資格を取れたときは、本当に嬉しかったですね。

理想の保育を求めて、自分の園を立ち上げた

保育士の資格をとってから、変わったことはありますか?

やっぱり、できることの幅は広がりましたね。たとえば担任になると、子どもたちとの信頼関係がぐっと深まるんです。昨日話せなかった子が話せるようになる、歩けなかった子が歩けるようになる。そんな成長の瞬間に立ち会えることが、なによりの喜びでした。
ただ、働く中で「もっとこうだったらいいのに」と感じることもありました。

理想と現実のギャップを感じることがあったのですね。

はい。たとえば、子どもには「みんな仲良くしようね」と伝えているのに、大人同士がうまく連携できていない場面を見ると、「これでいいのかな」と思うことがありました。子どもたちに伝えていることと、それを教えている大人の実情が一致していない気がして。

環境を変えれば改善するかもしれないと思い、いくつかの園を経験しました。それぞれの園で学ぶことはたくさんありましたが、「自分が理想とする保育」を実現するには、自分で園をつくるしかないのかもしれない、と考えるようになりました。そして2013年に起業して、保育園を立ち上げました。

大きな決断でしたね。

保育士になるために、自分でお金を貯めて学校に通った経験がありましたから、「やりたいことがあるなら、自分で動くしかない」という気持ちは強かったと思います。理想の保育があるなら、その保育が実現できる保育園をつくろう、と。

それまで経験した園では、課題ももちろんありましたが、それぞれによいところもありました。小規模な園は保護者との距離が近い、雨の日も散歩に出る園は子どもたちと新しい発見ができる。そういった学びを、自分の園にも活かしていきました。

たとえば、立ち上げ時から今も定員40名の小さな園にこだわっているのは、これまでの経験で小規模のよさを実感しているからです。小さな園だと、子ども一人ひとりはもちろん、保護者の方の子育ての悩みや気持ちも把握しやすい。子どもだけでなく、保護者の方への支援も大切にしたいので、私はこの規模がちょうどいいなと思っています。

「ありがとう」と言い合える園をつくる

田中先生は、自身の園を立ち上げてから、10年以上園長先生として活躍されています。園長として大切にしていることを教えていただけますか。

「大人がまず見本を見せる」ということです。子どもに「楽しく過ごしてね」と伝えるなら、まず私たちが楽しく働く。「仲良くしようね」と伝えるなら、大人同士が仲良くする。言葉だけでなく、行動で示すことを大切にしています。

また、園を支えてくれる職員に対しても、一人ひとりの生活を大切にできる職場でありたいと思っています。たとえば、職員のお子さんが熱を出したら「すぐ帰って」と伝えますし、運動会など行事があるなら「絶対に参加して」と伝えています。

それは、子どもがいる先生だけに限りません。親御さんの介護が必要になることもありますし、ペットを家族のように大切にしている人もいます。その人にとって大事なものを、お互いに尊重し合える職場を実現したいと思っています。

先生の園では、「すみません」ではなく「ありがとう」を大切にしている、とお聞きしました。

たとえば、お子さんの体調不良で急に休暇を取らなければいけなくなったとき、「すみません」と言いたくなりますよね。でも、うちの園では「そんなときは『ありがとう』と言ってほしい」と伝えています。
子育て中は、同僚に助けてもらう場面が多いかもしれません。でも子どもが成長すれば、今度は自分が誰かを助ける側になる。誰でも、助けたり助けられたりする時期があるものですよね。だからこそ、お互いさまの気持ちで「休んでいいよ」と言い合える関係でありたいな、と思っているんです。

「子どもだけでなく、保護者の方への支援も大切にしたい」とおっしゃっていました。保護者の方と接する中で、大切にしていることはありますか?

「自分がこの子の親だったら」と考えるようにしています。たとえばイヤイヤ期は、渦中にいると終わりが見えないように感じますよね。でも長い目で見れば、ほんの一瞬なんです。だから、その時期を無理に厳しく乗り越えなくてもいいと思っていて。朝の着替えをどうしても嫌がるなら、パジャマのまま登園してもいい。お気に入りのおもちゃを持ってきたいなら、持ってきてもいい。登園後、しばらくしてから保育士が「着替えようか?」「おもちゃはカバンにしまおうか?」と言うと、すんなり聞いてくれる子も多いんですよ。

せっかく保育園に通っているのだから、お子さんの成長を喜ぶのも、悩むのも、親御さんと一緒にやっていきたい。そう思っています。

保育の仕事には将来性も、やりがいもたくさんある

今後の目標を教えてください。

今は保育だけでなく、障がい者のグループホームや就労支援、訪問看護ステーションなど、福祉全般に事業を広げています。
きっかけのひとつは、園に通っていたお子さんに、医療的なケアが必要になったことでした。たとえばインスリン注射などの医療行為は、保護者か看護師にしかできません。もし園に看護師がいなければ、保護者の方が関わるしかなく、「明日から仕事に行けない」という状況になってしまいます。それはとても大変なことですよね。でも看護師がいれば、保護者の方が仕事を続けながらお子さんを預けられる。そう思って、訪問看護ステーションを立ち上げ、園に看護師を派遣できる体制を作りました。

もうひとつは、保育士のキャリアの幅を広げたいという思いです。保育の経験を活かしながら、障がい者支援など別の分野で働くという選択肢があってもいい。実際に、グループ内の障がい者施設で働くことを選んだ先生もいます。保育士として培ったスキルを活かせる場所を、これからも増やしていきたいと考えています。

最後に、保育士を目指している方へメッセージをお願いします。

保育の現場では、臨機応変な対応力が自然と身につきます。子どもは一人ひとり違いますし、昨日と今日で状況も変わる。その中で培われる「相手の気持ちを察する力」は、どんな場面でも活きると思います。

保育士の資格があれば、保育園や幼稚園だけでなく、放課後等デイサービスや乳児院、児童養護施設など、活躍できる場所はたくさんあります。迷っているなら、まずやってみてほしい。それくらい、保育の仕事には将来性も、やりがいもたくさんあるんですよ。

(文:仲奈々、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)

田中先生が働いている園
施設名:きずな北保育園(代表)・よつば保育園(園長)
形態:認可保育園(40名)・企業主導型保育園(7名)
設立:2020年・2021年
所在地:札幌市北区北28条西5丁目1-26

※2025年12月9日時点の情報です

担当者インタビュー「すてきな園長先生」に込めた想い【推薦募集中】あなたの周りの「すてきな園長先生」教えてください

すてきな園長先生の記事

記事一覧をみる

NEW

新着記事