子どもを「子ども」としてではなく、ひとりの「人」として向き合う【内藤裕依園長先生】

すてきな園長先生 保育

今回お話を聞いた方

内藤裕依(園長)
出身地:埼玉県
保育園勤務歴:9年目
園長先生歴:2年目
趣味:キャンプ、アウトドア
好きな手遊び歌:「いわしのひらき」

実習最後の日に「先生ありがとう」と言ってくれた

内藤先生が保育士に憧れたきっかけを教えてください。

親に聞いたところ、ものすごく小さい頃から「保育士になりたい」と言っていたようです。僕自身、保育園に通っていたのですが、先生と遊ぶのが楽しかった記憶は今でも残っています。また、自分より小さい子と遊ぶのもずっと好きだったから、自然とそう思うようになったのかもしれません。

そこから、具体的に保育の道に進もうと決めたのは、いつ頃だったのでしょうか?

高校生の頃です。僕が通っていた高校では、保育を学ぶ授業が選択できました。座学はもちろん、校外学習として近隣の保育園を訪れ、実際に子どもたちと関わったりも。そこで、「やっぱり子どもたちと遊ぶのは楽しいな」と、改めて実感して。保育専門学校に進学することを決めました。

専門学校での実習では、さらに子どもたちと関わることができました。約2週間の実習で、年中クラスを担当させていただいたときのことです。実習最後の日に、「先生ありがとう」と言ってくれたんですよ。なかには、お手紙を書いてきてくれた子もいて。僕と出会ったこと、そして一緒に過ごしたことをこんなにも喜んでくれている。嘘がつけない年齢の子たちだからこそ、その言葉が余計に嬉しかったですね。

たった2週間の実習でこれなら、1年、2年と関わったらどうなるんだろう、とワクワクしました。

「怖い」と言われても、笑顔で関わり続けた

では、実際に保育士になってからの話も聞かせてください。

正直、なったばかりの頃は「しんどい」って思うことのほうが多かったかもしれません。
最初に入った園は、男性保育士が僕ひとりだけでした。そもそも、男性保育士の採用自体が初めてだったんです。その環境に戸惑ってしまって、なかなか先輩たちとの関係を築けなかった。さらに、何人かの子たちから「男の先生怖い」って言われてしまって……。

当時は「子どもたちと楽しく遊ぶのが保育士の仕事だ」と思っていたから、「怖がらせてしまうなら、無理にコミュニケーションをとらない方がいいかも」と思って、距離をとってしまったんですよ。今考えると、ダメダメですよね。
そんな感じだから、先輩たちからはよく注意されていました。でも、関係が築けていないから、それも「しんどい」と思ってしまって。そんなときに、当時の園長からある言葉をかけられたんです。

どんな言葉だったのでしょうか?

「まずは、あなたが楽しそうにしている姿を子どもたちに見せなさい」と言われました。
子どもたちからすると馴染みのない男性で、体も大きいから、最初はそれでびっくりさせてしまったかもしれません。でも、なかなか信頼関係が築けないのは、僕が男性だからという理由だけではない。不安そうな顔をして園の中を歩いていたり、子どもたちを避けたりしていたら、子どもたちも嫌だよな、と。

そこから、いくら「いや!」と言われても、笑顔で一緒に遊んだり、生活のお手伝いをしたりするようにしました。そうしたら、少しずつ子どもたちも笑顔を見せるようになってきたんです。

具体的には、どのように子どもたちと信頼関係を築いていったのでしょうか。

当時どうだったかはよく覚えていないのですが……。今、昔の僕と同じように子どもたちとの関係づくりに悩んでいる後輩保育士には、「その子を知ろう」と伝えています。その子はどんな遊びが好きで、何に興味を持っているのか。どんなことをしているときに、目がキラキラ光るのか。

その子の好きなことや得意なことを見つけて、一緒にする。それは、子どもたちにも「安心感」「信頼感」として伝わっていくと思っています。それに、普段から関係性を築けていないと、その子を注意するときに「いつもは無関心なのに、こんなときだけ怒ってくる怖い人」と思われてしまいます。それでは、伝えたいことは伝わらないし、不安にさせてしまうだけです。子どもたちの心身の健康のためにも、関係づくりは大切なんです。

同じように、子どもたちの安全や心身の健康を守るには、子どもたちとの関係づくりだけでなく、職員や保護者とも協力する必要があります。

保育士なりたてのころは、職員となかなか打ち解けられなかったとお話されていましたよね。職員とはどうやって信頼関係を築いていったのでしょうか?

自分が保育士として未熟なことを受け入れて、先輩や同僚のアドバイスは素直に受け止めることを心がけていました。また、運動会の打ち上げなど、職場以外の場所で職員と話せる機会があるときは話すようにして。そうしたら、見えてくるものがたくさんあったんですよね。

大人同士の関係性は、子どもにも伝わります。雰囲気や言葉かけひとつが、子どもたちの成長や感受性に響くんです。だから、先輩たちは職員同士もいい雰囲気であろう、職員も子どもも笑顔で過ごせる園にしようと協力し合っていました。

例えば、泣き声が響き渡っているクラスがあったら、他のクラスや休憩中の先生が「どうした? 何か手伝おうか」と様子を見にきてくれる。
それがあたり前の環境だったから、「保育はひとりでやるものじゃない。みんなで協力してやるものなんだ。だから、周りとの信頼関係が大事なんだ」と理解していきました。

「自分のクラスだけ」から「園全体で」へ

その後、入社5年目のときに法人内で異動があり、現在の園に配属となったそうですね。

はい。同じ法人でも、園によって雰囲気ややり方が違うんですよね。前の園では、クラス関係なく協力しながら保育をする文化がありましたが、この園では「自分のクラスは自分で見る」スタイルでした。

そのためか、受け持つクラスによって、お休みが取りやすいかどうか、残業が多いかどうかが全然違って……。大前提、どのスタイルがいい悪いではなく、それぞれによい面、改善すべき点があると思っています。ただ、負担が大きいクラスの先生はだんだん余裕がなくなっていく。余裕のなさは、園児にも伝わってしまいます。

一人ひとりの先生方は、真剣に園児のことを考えている素敵な方たち。だからこそ、仕組みを変えて、連携できるようになれば、もっとよい保育ができるようになる、と考えました。

具体的には、どんなことに取り組んだのでしょうか?

「園の職員全体で、園の子どもたちを見る」という意識を大切にしました。困っているクラスがあったら、担任だけで抱え込まずに、園全体でフォローし合える体制をつくりたかったんです。そのために、まずは自分から「困っていることはありませんか」「お手伝いさせてください」と、いろんなクラスに声をかけるようにしました。

次第に「一緒に園を変えたい」「協力させて」と仲間が増えて。気づいたら、リーダー、主任と、任せていただけることがどんどん増えていきました。

そうした取り組みを続けた結果が、「園長」という立場につながったのですね。

2024年4月に、園長にならないかと声をかけていただきました。正直、不安はありました。園長は、情報が不十分な中でも判断しなければならない場面がある。「経験がないから」とは言い訳できない立場です。

一緒に園をよくしてきた仲間たちと、これまで積み重ねてきたものを土台に進んでいきたい。そう思って、挑戦することにしました。

保育は大変。でも、それ以上に幸せな時間が待っている

園長として、職員にはどんなことを伝えていますか?

「子どもを『子ども』として扱わないでほしい。『人』として扱ってほしい」ということです。僕自身もそうだったのですが、つい「教えてあげてる」という姿勢で、子どもたちと関わってしまうことがあって。それって驕りだと思うんですよね。そのままの状態では、子どもたちとうまく向き合えません。

「大人だから、保育士だから偉い」ではなく、対等なひとりの人間として向き合ってほしいと伝えています。

最後に、保育士を目指している方に向けてメッセージをいただけますか。

保育は、子どもたちの命を預かる仕事です。そして、保育士のかける声や関わりは、子どもたちの成長にも少なからず影響を及ぼします。その責任は、正直とても重いです。でも、だからこそ見られる喜びや成長がある。嘘をつけない年齢の子どもたちとの関わりは、自分自身を振り返るきっかけにもなるんです。

大変だけど、それ以上に楽しいことや幸せな時間が待っています。ぜひ、挑戦してみてください。

(文:仲奈々、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)

内藤先生が働いている園
施設名:まなびの森保育園 ヴィラ・ココロット
形態:認可保育園(60名)
設立:2016年
所在地:東京都足立区新田2-1-13

※2026年1月13日時点の情報です

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