新設園の立ち上げを5回経験。「人生の尊い時期を一緒に過ごせる」保育士という仕事のやりがい【上野小夜子園長先生】

すてきな園長先生 保育

お話を聞いた方

上野小夜子(園長)
出身地:東京都 
幼稚園・保育園勤務歴:37年
園長先生歴:19年
趣味:長年の「嵐」ファン。休日はライブ観戦、読書、ドラマ視聴、同業の娘とのおしゃべりでリフレッシュ。

幼稚園から保育園へとステージを変えた理由

上野先生が保育士になろうと思ったきっかけを教えてください。

理由は2つあります。ひとつは、幼稚園の先生との出会いです。今でこそこうして人とお話することが大好きな私ですが、幼少期は極度の人見知りで、いつも誰かの後ろに隠れているような子どもでした。そんな自分が、優しかった幼稚園の先生のおかげで少しずつ性格が明るくなり、「先生になりたい」と夢を抱けるようになったことが大きいですね。

小学校の先生になりたい気持ちもありましたが、道を歩いていて子どもを見かけるとつい「かわいい」と目で追っている自分に気づいたこともあり、短大卒業後から幼稚園教諭として現在勤めている保育園の母体である幼稚園で働き始めました。

では、 2つ目の理由とは?

そこから同級生だった夫との結婚と2度の出産を挟み、入社11年目に、幼稚園を運営している法人の理事長が「これからは私たち女性が働く時代。幼保を一体化した理想的な保育園をつくりたい」と発案されたんですね。理事長は当時まだ幼稚園では珍しかった「延長保育」をいち早く取り入れるなど新しい可能性を形にする方でしたから、私としてもワクワクしながら、同市での保育園の立ち上げをお手伝いしようと決めました。

それに、我が家は共働きで当時は2歳だった自分の子を保育園に通わせていましたので、保育園という存在に大きな感謝がありました。また、自分自身も長く働き続けるのであれば保育園という選択肢もいいかもしれない、と考えたことが、保育士になった2つ目の理由です。

幼稚園から保育園に移ってみて、違いを感じる部分はありましたか。

保育時間の長さと、ご家庭の状況ですね。当時の幼稚園は専業主婦のお母さまが多く、預かり時間も短かったのに対して、保育園はその逆でした。そのためか、保育園は先生たちに甘えたい気持ちが強く出る子が多かったですね。と同時に、自分の身の回りのことがしっかりできる、自立したお子さんもたくさんいました。

3歳児で比べるとわかりやすいかもしれません。幼稚園では3歳児はまだ「小さい子」の扱いですが、0~6歳を受け入れる保育園だともう「中堅」ですよね。その違いが新鮮でした。

先生方の働き方に関してはいかがでしたか。

そこもギャップがありましたね。幼稚園は自分のクラスを朝から夕まで見て、一緒に「さようなら」をして終わることが多かったのですが、保育園はシフト制です。自分が出勤する前も、ときには退勤後も保育が続いていることもある。一日を通した流れの中で子どもを見守っていく感覚なんだな、という発見がありましたね。

お世話好きで、子どもと一緒に楽しむことが大好きな自分にとっては、保育士はすごくやりがいがある仕事です。子どもたちが今、なにをしたいのかを汲み取り、目を見て頷きながら、最後まで話を聞く。子どもたちの興味や関心にふれる瞬間は、本当に楽しいですよ。

新しいことにチャレンジすることが大好き! 38歳で園長に

園長になった経緯についても教えてください。

保育園に主任として異動となった4年後に、都内新設園の園長に就任しました。ちょうど2000年代前半は待機児童が増えて保育園が拡大していくタイミングで、我々の社会福祉法人としても自治体からの要請を受け、都内のさまざまなエリアに進出していた時期でした。

私が任されたのは、その区で初となる公設民営の指定管理園の立ち上げ案件でした。当時は役職の保育士歴など、指定管理者への条件が今より格段に厳しい時期でしたから、まだ38歳だった私としても自分が園長になるなんて想像もしていなかったんですね。

でも、理事長からの「年齢なんて関係ない。新園園長はあなたしか考えていない」との推薦を受け、若くしての園長就任となりました。

大抜擢だったのですね。どうして推薦されたのだと思いますか?

自分で言うのは照れくさいですが、理事長からは「あなたは法人理念の深い理解と、保育に対する意識・志の高さ、職員をまとめる包容力、そして何より新しいことに対して前向きで行動力がある。自分と一緒に頑張ってくれる一番の仲間だから」と言われました。

とはいえ園長としては新米でしたから、管理職としての園長というよりは、みんなと一緒にバリバリやっていく現場に近い園長でしたね。そこから今日まで、同じ法人で長くこの仕事に携わってきました。

5度の新設園立ち上げを経験してわかったこと

新設園のオープンと同時に園長に就任されたのですね。

そうなんです。そこから園長として数年おきに異動しながら、新設園の立ち上げをトータル5回経験してきました。現在の保育園も、2025年度に公立園から当法人が指定管理で引き継いでスタートを切った園ですが、今回10年ぶりに指定管理園をオープンすると聞き、園長職に立候補しました。7年間、園長を務めた前の園も充実していましたが、50代半ばという年齢に差し掛かったからこそ、再び新たなチャレンジをしてみたいと思ったからです。

いろんな区市町村での保育園立ち上げに関わったからこそわかったことですが、保育ってどこにいてもやっぱり楽しいんですよ。どのエリアにもそれぞれにいいところがあって、その地域性を加味しながら、自分たちの園を進化させていく。その過程に心からやりがいを感じています。

上野先生は立ち上げのプロフェッショナルでもあるのですね。とはいえ、新設園の初年度は環境整備から人材育成まで、大変なことが多そうです。

もちろん、大変なことは山ほどありますが、その「ラクではないところ」も楽しいんです。今の保育園でいえば、私たちの法人が運営開始する前に公立園として長い歴史があった園ですので、それまで築いてきたことをどう継承するか、その上で自分たちの特徴をどう取り入れていくかというバランスを取る難しさがありますね。「例年通り」という前例がないからこそ、行事や方針ひとつとっても、どの路線で進むかを職員同士でしっかり考えながら話し合っていく必要もあります。

私の場合、これまで大型園が多かったのですが、園児の顔と名前は全員分覚えるようにしています。以前の園は150名、今は176名定員ですが、4月の開園のときには当然ながら一気に全員の子どもたちと「はじめまして」となるんですね。その子たちの名前や個性、家庭環境、親御さんの顔も知らないような状態で、大切な命を預かるわけにはいきませんから、園児全員の情報は名簿順にすべて覚えて、頭に入れています。

176名全員を! それは膨大な準備が必要だったのでは。

はい。でも、ICT導入によって新規園開設にまつわる業務負担はずいぶん改善されたんです。私は何度も立ち上げてきたから実感しているのですが、コドモンを活用してさまざまな情報が整理されているので、直近の立ち上げが一番ラクでしたね。
それにどうせなら「大変だ」と言いながらやるよりも、楽しみながらやりたいじゃないですか。だから、職員とこまめにコンタクトを取って「これからこの園はどんどんよくなるよ!」とポジティブな声掛けをしつつ、保護者の方々にも安心していただけるように、これからも地道に実績を積み重ねていくつもりです。

母の背中を見た娘も保育士の道へ

では、園長として大切にしていることは?

「安全安心」です。命を大切に守るという土台があって初めて、楽しい保育が形になると私は考えています。事故や怪我のない体制を整えるための危機管理。救命、消防、防犯などは、保育園においてもっとも重要な部分だと思っているので、避難訓練はもちろん、保育園に特化した危機管理会社とも契約し専門講師を招いての研修も行っています。安全と安心、そこさえしっかりしていれば、あとはもう「楽しい」という気持ちしかありません。それに、私たち大人が一人ひとりと真摯に向き合えば、愛情や楽しさは必ず子どもにも伝わるはずですから。

一緒に働く先生方と話すときも、「その保育は誰のため? なんのため?」と自問する軸を持ってもらうよう心がけています。その取り組みが、本当に子どものためになっているのか。一人ひとりの保育士がそこを真剣に考えられるようになれば、みんなの気持ちは自然とひとつになっていくものだと思っています。

これは新園でもそうでなくても大事にしていることです。ゴール、目指す先はここだよ、とみんなで共通認識を持ったら、あとはそれぞれにエンジョイしながら進んでいけばいい。

そういう積み重ねを経て、子どもたちがいつか大人になったときに「この保育園に通ってよかったな」と思い出してもらえるようになったら嬉しいですね。

あたたかく見守られて過ごした日々は、子どもたちの心にもきっと宝物として残るはずです。

実は、私の娘も保育士なんです。娘は昨年に大学を卒業して新卒で採用された別の園で働いていますが、母娘で同業になったおかげで話がすごく盛り上がるようになりました。私は自分の経験から娘にアドバイスできる部分があるし、「現場でこんなつらいことがあったんだ」という娘の悩みを聞くことで若手の先生たちの気持ちにこれまで以上に寄り添えるようになりましたね。

もちろん、守秘義務があるのでお互いに言える範囲だけで悩みを話し合う感じですが、多分、今の私は悩める若手保育士さんにはすごく優しい園長になれているかもしれません(笑)。

(文:阿部花恵、撮影:中村隆一、編集:コドモン編集部)

上野先生が働いている園
施設名:社会福祉法人聖華 中里保育園
形態:認可保育園(176名)
設立:1972年
所在地:東京都北区中里3-11-18

※2026年2月25日時点の情報です

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