園長会の運営に携わるみなさまに向けて、先進的な園長会の取り組みを紹介するシリーズ「となりの園長会」。本企画は、2025年3月に実施した、園長会に関するアンケートで「会議の活性化に悩んでいる」という回答を多くいただいたことから始まりました。
第一回目は、50年以上の歴史を誇り市内100園以上が加盟する大規模な園長会「浜松民間保育園長会」。同会の会長を務める、入野こども園 園長の中村勝彦さまにお話をうかがいました。
<今回の園長会>
・名称:浜松民間保育園長会
・主催:民間保育園・こども園による自主組織
・参加施設の種別:社会福祉法人立及び学校法人立の保育園及び認定こども園
・会員の園数:105園
・創設:1968年
・定例会の開催頻度:月1回(8月除く、年間11回程度)
<記事の要約>
・園長同士の交流を重視。定例会では年4回のグループ討議(8〜10名)を行う
・年1回、加盟園向けにアンケートを取る。回答は理事会で共有し、会の運営に反映
・加盟園の声を受け、園長会主導のキャリアアップ研修や就職関係イベント等を積極的に開催
・地域ニーズを把握するため、各園の職員や保育学生向けのアンケートを実施。結果は加盟園にも共有
浜松民間保育園長会は1968年に8園でスタートしました。今では105園が加盟し、市内民間保育施設の多くが関わる大きな組織になっています。定例会は、8月を除く毎月第3木曜の13:30から開催し、一回の会議時間は約90分〜2時間。参加率は平均9割ほどで、みなさん熱心に情報交換や意見交換をされています。
園長会内には、「調査研究」「保育研究」「危機管理」「労務運営」の4つの委員会があり、各分野の調査や研修を実施し、その成果は行政への提案や情報共有に役立てています。それに加えて「青年部」を設けています。青年部では、45歳未満の若手園長等約36名が次世代リーダー育成のため研修・交流を積極的に行っています。
また、静岡市の園長会とも年2、3回オンラインの動画会議や視察を相互に行い、補助金制度の比較など情報共有も進めています。
理事は10名で役割分担しており、役員の負担軽減を常に意識しています。私は役員歴14年、会長としては7年目になりますが、世代交代も進んでいます。事務局も1名配置しており、運営や資料作成などの裏方を担ってもらっています。理事会は年間10回開催し、園長会全体の方向性やイベント内容を議論しています。
事務局が担当してくれています。連絡手段はメールで、一回の会につき二度送付します。一度目は「開催日」の連絡を、二度目は会の1週間ほど前に「当日の詳しい流れ」を送る形です。会の主題などもそこで伝達しています。
資料については、二度目のメールを送る際にデータで事前共有しています。必要な方だけが印刷して持参する仕組みです。こういった運営の効率化は役員の負担軽減にもつながっています。
定例の内容とタイムライン
定例会は、まず30分程度の行政からの情報共有から始まります。最近は行政の発表が、YouTube上の配信でも行われるため、特別な説明(担当課の人事異動や5歳児健診についてなど)がある場合のみ、担当課の職員の方が現地に出席してくれます。
次に園長会主催のパートで、制度等の説明や協力依頼。そして、はままつ保育士会や静岡県保育連合会など関連団体からの報告が続きます。
毎年4月には総会を開催し、前年度の事業報告・決算と今年度の事業計画・予算を審議します。浜松市長や担当部長も来賓として参加され、保育現場と行政の橋渡しをしています。
<タイムライン>
13:30〜14:00 行政からの連絡
14:00〜14:30 園長会主催行事の説明、関連団体からの報告
14:30〜15:00 委員会やグループ討議
※報告が少なく、委員会・グループ討議がない場合は30分程度で終了することも
園長は日々孤独になりやすい職種です。そこで、同じ立場の仲間と自由に話せる場を設けることを重視しています。例えば年4回のグループ討議では、1グループ8~10名に限定し、理事がファシリテーターとして進行を担当します。
人数が多すぎると意見が出にくく、逆に少なすぎても活発な交流につながらないため、この人数に落ち着きました。各園の工夫を知り、自園で取り入れられることを見つけられると好評です。
発表までは時間がとれないため、各グループで出た意見をまとめた誌面を後ほど共有しています。
採用や給与についてなど、その場でないとできないテーマを選ぶことが多いです。直近の討議のテーマをご紹介します。
・5 月 :「新年度を迎えて・ICT 化について」
・10 月:「防災について(防災対策、災害時の対応等)」
・11 月 :「人材育成、働き方、処遇改善等に関する調査」「園児募集」 「キャリアアップ研修」
・12 月:「新年度に向けての取り組み(行事の取り組み、課題等)」
テーマに合わせて地域別やランダムでグループ分けし、課題を深掘りしています。
加盟園のニーズに沿った会にできるよう、年に一度、参加者の声を聞くアンケートを実施しています。昨年度は園長会や就職説明会、キャリアアップ研修に関してアンケートを行い、約7割以上の園長から回答をいただきました。意見は理事会で取りまとめ、具体的な企画やテーマに反映しています。
また、各園の職員に対するアンケートもオンライン上で園長会が実施しています。処遇や仕事に対する意見を無記名で記入してもらいます。地域のニーズや今の課題が見えてくることを期待しての取り組みです。園単位ではなく園長会が行うアンケートということで、本音で書いてもらえていると感じます。
加盟園の方々の多くが職員の採用に課題を感じていることから、園長会が主導して「合同就職説明会」や「オープン保育」など就職関係のイベントを開催しています。特に、学生や求職者と保育施設が直接ふれ合える機会を設けることに注力しています。
(園長会主催の採用イベントのチラシ)
合同就職説明会では、市内の多くの園がブース出展されていました。学生がたくさんの園を知ることができるよう、時間を区切って複数の園を見てもらう「シールラリー」形式を導入し、回遊を促しています。
また、イベントでは学生にインタビューを実施し、ニーズの聞き取りをしています。アンケート結果は園長会でみなさんに共有します。
園長会主導でキャリアアップ研修を実施しています。集合研修とeラーニングの両面で年間2回開催しました。
実は、以前から「県のキャリアアップ研修の定員に漏れてしまう」という課題が園長会で上がっており、それを受けての取り組みです。加盟園が困らない仕組みをつくるため、県のキャリアアップ研修を補完する形で「園長会主導のキャリアアップ研修」を始めました。県内では初めてのことだと聞いています。
園長会の前に、理事会と行政担当課で懇談の場を設けています。園長会で出た意見を提案することもあります。意見を受けて、国の補助金事業や「子育て支援員研修」を市でも実施いただけるようになりました。前述のキャリアアップ研修についても、以前は全額園長会の持ち出しだったものが前年度から半額、市が補助金を出してくれています。
園長は孤独な立場になりがちで、同じ立場の仲間と悩みや課題を共有できる場は非常に貴重です。ぜひ他の園長会にも積極的に参加して、多様な視点や情報を取り入れていただきたい
と思います。
また、私は理事会の役員の存在にも救われています。さまざまなことを相談できますし、もし自分が何か提案して、ズレがあったときにも役員会でストップをかけてもらえます。私たち浜松民間保育園長会の経験が、みなさまの園長会活性化のヒントになれば幸いです。
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加盟園、各園の職員、保育学生……多様な関係者の声を尊重しながら、新しい取り組みを打ち出し続ける、浜松民間保育園長会。アンケートの高い回答率は、書いた意見が運営に活かされる実感があるからこその結果だと感じました。
グループ討議の開催やテーマの選び方、アンケートの実施など、会の活性化のための取り組みは、他の園長会でもすぐに取り入れることができそうです。園同士が連携することで地域の保育に大きな変化を生み出すことができることがわかり、非常に勇気をいただけるお話でした。
【取材協力】
中村勝彦さま(入野こども園 園長・浜松民間保育園長会 会長)
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コドモンでは今後も、多様な園長会の取材を予定しています。
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※2025年6月時点の情報です
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