「最近、保護者の教育への関心が高まっている気がする……」 「地域の園児募集の状況が、以前とは変わってきた……」
日々の運営の中で、このような変化を感じている園長先生も多いのではないでしょうか。 実際、少子化が進む一方で、保護者のニーズや働き方などはますます多様化し、保育園に求められる役割も変わりつつあります。近年は、英語・ダンス・アート、食や自然体験、探究的な学びといった「学びの質」を求める声がより強まっており、園としてその期待に応える環境づくりが求められています。
こうした保護者ニーズの変化を受け、学びの質を高めながら園経営の安定化も図れる選択肢のひとつが、「認定こども園」への移行です。新たに1号認定の枠を設け、園児数を増やすことで収入を増やし、園経営をより安定させるというケースもあります。
地域によっては認定こども園へ移行することで、一定の収入を確保しながら、保護者の就労状況にかかわらず子どもを受け入れられるようになり、地域の多様なニーズに応えることも可能となります。
今回は、移行を検討し始めた園長先生に向けて、「具体的な手続き」と「全体の流れ」を、6つのステップに沿ってご紹介します。
認定こども園には、施設の成り立ちや機能によって4つの「型」があります。

幼保連携型
幼稚園機能と保育所機能の両方をあわせ持つ、もっとも主流のタイプです。法的には「学校」であり「児童福祉施設」でもある単一の施設として認可されます。これにより学校教育(幼稚園の教育)を提供する「学校」として、法的に位置づけられます。 原則として保育教諭※の配置が必要です。
保育所型
既存の認可保育園が、幼稚園機能(1号認定の受け入れや教育的機能)を追加したタイプです。 保育士資格があれば勤務可能ですが、3歳以上児は幼稚園教諭免許の併有が望ましいとされています。
幼稚園型
既存の認可幼稚園が、保育所機能(長時間預かりや0〜2歳児保育)を追加したタイプです。 3歳以上児は「幼稚園教諭免許」、3歳未満児は「保育士資格」を持つ職員の配置が必要です(両免許の併有が望ましい)。
地方裁量型
認可外の施設などが、地域の実情に応じて機能を果たすタイプですが、数は多くありません。 保育士資格または幼稚園教諭免許が必要です(両免許の併有が望ましい)。
認可保育園からの移行を検討する場合、実質的な選択肢は「幼保連携型」か「保育所型」となります。
※保育教諭:幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持つ職員

最初にして最大のハードルが行政との調整です。市区町村が策定している「子ども・子育て支援事業計画」の需給バランスに合わなければ、移行を認められないケースがあります。
たとえば次のような要望を提示します。
「2号定員を10名減らし、1号定員を10名新設したい」
「就労の有無にかかわらず、預け続けられる環境をつくり、多様なニーズの子どもや保護者を受け入れるため、1号定員9名を新設したい」 など
提示の際には以下も整理すると効果的です。
まずは移行の意思・理由・必要性を具体的に提示しながら、行政担当者との方向性をすり合わせると、合意形成の近道になります。
行政との協議を踏まえ、
認可の審査のスケジュールは年1回の自治体が多く、逆算すると、相談から開始までにかかる期間の目安は1年以上(改修ありなら、2~3年)です。
選択した型に応じて必要な資格が変わります。
特に「幼保連携型」を目指す場合、原則として「保育教諭」の配置が必須となります。 現在働いている非常勤を含むすべての職員の保有資格を確認し、免許取得が必要な職員への支援計画を立てておくとスムーズです。
認定こども園では、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」に基づくカリキュラム策定が必要になります。 1号認定の子どもと、2号認定の子どもが一緒に過ごす時間をどうするか、具体的な教育・保育の内容と生活の流れなどを再設計します。
準備が整ったら、市区町村経由で都道府県に認可申請を行います。(政令指定都市・中核市の場合は市に提出。)ここで注意が必要なのが、「幼保連携型」への移行です。法的には「既存の保育所を廃止」し、新たに「認定こども園を新設」する手続きとなるため、書類作成や手続きが多く、複雑になります。
事業計画書や資金計画、各種規程など、さまざまな書類の作成と見直しが必要になるため、余裕を持った準備が必要です。
移行後の地域の受け皿、1号定員の必要性など、行政が判断しやすい情報を準備して臨むことが重要です。
保育所型と幼保連携型では、補助金での違いはありますが、公定価格の収入はほぼ変わりがありません。
保育所型は保育士資格もしくは幼稚園教諭のどちらかでよいため、移行しやすい一方、幼保連携型は保育教諭が必要です。特例制度(※)の終了を見据え、資格取得の支援体制を早めに整えるとスムーズです。
※資格要件に関する経過措置があります。片方の免許しか持っていない職員でも勤務を可能とする「経過措置(特例)」および免許取得の特例制度は2030年(令和12年)3月31日まで延長されました。なお、主幹保育教諭・指導保育教諭としての経過措置の期限は2027年(令和9年)3月31日までとなり、一般の保育教諭より3年早く経過措置が終了となりますのでご注意ください。
認定こども園では、1号認定児と2号認定児が混在します。 「合同で行う活動(コアタイム)」と「分離する時間」をどう設計するか、これまでの保育園の強み(食育や生活習慣の指導など)を活かしつつ、どうしていくのかなど、現場の職員たちと話し合いながらつくり上げていくこともポイントになります。園の特色を明確にすることで、園の魅力をより伝えやすくなり、情報発信や募集活動にも効果的です。
行政との協議、資格要件の充足、カリキュラムの再構築など、認定こども園への移行の手続きには多岐にわたる準備が必要です。また、自園だけで完結できるものでないため、行政の担当者とのコンタクトを取り、地域の状況と園の希望をすり合わせるところから始めましょう。

監修者コメント
認可手続きを中心にお伝えしてきましたが、移行にあたっては、認定こども園のさまざまな制度を正しく理解したうえで進めてこそ、本当の意味で安定した運営につながります。
経営面で押さえておきたいのは、1号定員を設定できても、実際に園児が確保できなければ収入は増えないという点です。保護者ニーズを踏まえた1号の受け入れ体制、認定こども園ならではの教育・保育の方針、園児募集につながる導線づくりなどを含め、制度と運営の両面から再設計していくことが重要です。
認定こども園への移行を、単なる制度対応ではなく、これからの時代に合わせた園経営そのものを見直す機会として捉えることが、将来にわたって持続可能な園づくりにつながっていくでしょう。
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