保育園やこども園の健全な運営に必要な人件費、設備の整備などの費用負担を軽くするために、国や自治体は保育施設の施設整備・人材確保・ICT導入などを目的としたさまざまな補助金や助成金を用意しています。
この記事では、保育施設が活用できる主な補助金を整理し、制度の特徴や申請のポイントをご紹介します。自園でも活用できそうな補助金制度がないか、参考にしてみてください。
まずは、国が全国で実施している補助金を、用途別にご紹介します。
主に認可保育所、認定こども園、小規模保育事業などが対象ですが、制度や自治体によって異なる場合があります。自園で利用できるかどうかは、必ず事前に自治体の公式情報をご確認ください。
新規開園のための建設や既存施設の改修に必要な費用を支援し、安全で安心な保育設備の整備を後押しします。
| 補助金名 | 使途 | 申請のポイント |
|---|---|---|
| 就学前教育・保育施設整備交付金 | 【施設整備】 新規開園(建設・内装)、大規模修繕、耐震化、定員増加を目的とした増築・改築、老朽化した設備の改修(給排水設備、電気設備、ガス設備、冷暖房設備、消防用設備等の付帯設備工事)>新規開園(建設・内装)、大規模修繕、耐震化、定員増加を目的とした増築・改築、老朽化した設備の改修(給排水設備、電気設備、ガス設備、冷暖房設備、消防用設備等の付帯設備工事) |
・工事計画・図面・見積の整備が必要 ・年度内完了要件や交付決定前着工不可などの条件あり・年度内完了要件や交付決定前着工不可などの条件あり |
| 就学前教育・保育施設整備交付金 | 【防災対策】 耐震改修、防災工事(避難経路・避難設備の設置、耐震補強、感知器・通報装置などの固定設備)耐震改修、防災工事(避難経路・避難設備の設置、耐震補強、感知器・通報装置などの固定設備) |
・防災目的の設備工事が対象 |
園舎の新設だけでなく、耐震補強や防音などの部分的な改修工事も補助対象です。交付決定前に着工すると補助金の対象外になる場合がありますので、計画の早期段階で自治体に相談しておくと安心です。
保育士の処遇改善や加配などによる保育の質の向上や、保育士の採用・定着の強化を目的とした制度です。
| 補助金名 | 使途 | 申請のポイント |
|---|---|---|
| 処遇改善等加算 | 賃金改善、手当支給 | ・賃金規程や就業規則の整備が必要 ・職員への配分方法などの記録があるとスムーズ |
| 保育士宿舎借り上げ支援事業(保育対策総合支援事業費補助金内) | 常勤職員の家賃補助 | ・都市部を中心に実施 ・施設が職員宿舎費として申請できる ・上限額や条件は自治体ごとに異なる |
| 保育士等キャリアアップ研修事業 | 保育士のキャリア形成と処遇改善を目的とした研修の受講 | ・研修は施設を通じて申し込み ・自治体が定める「受講料免除者」に該当すれば無料で受講できる ・修了証を取得すると、処遇改善加算へ反映できる |
キャリアアップ研修事業は運営費ではなく職員のスキル向上支援のための補助です。研修を修了すると処遇改善加算に反映されるため、長期的な人材育成につながります。
処遇改善加算については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
保育者の処遇改善加算制度の一本化とは?令和7年度から変わる制度の解説
多様な園児・児童の受け入れ体制の整備や、感染症対策などの安全対策を支援します。
| 補助金名 | 使途 | 申請のポイント |
|---|---|---|
| 保育環境改善等事業 | 【受け入れ環境整備】 障がい児受け入れ、病児保育、一時預かり、放課後児童クラブ対応など受け入れ環境の拡充に関する設備や整備 |
・施設の機能拡充が対象 |
| 保育環境改善等事業 | 【安全対策】 睡眠中の事故防止機器購入、性被害防止のための設備や備品整備 |
・安全確保に直結する取組みが対象 ・見積書・仕様書の準備があるとスムーズ |
「保育環境改善等事業」には、夏季の室温管理を支援する熱中症対策事業(例:エアコン・遮熱カーテンの設置)や、衛生環境を整える感染症対策事業(例:手洗い設備の改修、非接触型機器の導入)なども含まれ、活用の幅が広いのが特長です。
業務のデジタル化や省力化、保護者との連絡効率化を支援します。
| 補助金名 | 使途 | 申請のポイント |
|---|---|---|
| 保育所等におけるICT化推進等事業 | 保育記録、登降園管理、保護者連絡などのICTシステム導入 | ・導入後に報告を求められる場合も |
| IT導入補助金 | 園業務管理システム、保育記録デジタル化、保護者連絡ツールなど | ・中小企業向けの補助金 ・導入するITツールが補助対象であることを確認 ・申請要件を確認し、導入計画書の整備が必要 |
「IT導入補助金」は中小企業向けですが、条件を満たせば園も活用でき、園業務を効率的に行うための幅広いツールに対応しています。
保育ICTの導入に使える補助金は、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
【最新版】保育ICTシステム導入に使える補助金を解説~種類・金額・申請の流れがわかる~
国の補助金制度に加えて、自治体が独自に実施している補助金も多くあります。地域の課題やニーズに沿った支援が用意されていて、国の補助金に上乗せされる場合もあります。
ここでは、実際に自治体で行われている補助金制度の例をご紹介します。
内容や条件は年ごとに見直されるため、詳細は必ず自治体の公式サイトで最新情報をご確認ください。
埼玉県では、一歳児を中心とした低年齢児保育の充実を目的に、配置基準を上回って保育士を配置する施設を支援する独自の制度を、国の「一歳児配置改善加算」創設に先行して昭和56年度から実施しています。国の加算制度ができたことで、国の補助と県の補助を併せて受けられる場合もあります。ただし、令和7年度からは国の制度にあわせて補助対象施設にICT導入などの要件が追加されました。このため、これまで補助を受けていた施設も、ICTを導入していないと、原則として令和7年度以降は補助の対象外となります。
詳細はこちら:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0607/syosikataisakukyogikai/r7-01gaiyo.html
保護者が荷物を持たずに登園できる“手ぶらで保育”を実現するための備品の整備を支援する制度です。保育施設がおむつや布団を管理するための収納やコットなどの購入費用が対象です。
保育所の新設や改修を後押しするため、国の交付金に加え、市が独自に補助を上乗せしています。
保育所を運営する社会福祉法人等に施設の運営改善と児童、職員の処遇改善を図ることを目的に、市が独自で行う補助で、法人を通じて対象職員の給与に上乗せされます。
保育業務の省力化と職員の業務負担軽減を目的に、ICT機器やシステム導入費を補助する制度です。
ここに挙げた事例以外にも、同じ目的で利用できる制度がある場合があります。国の補助金とあわせて、自園で活用できる制度を積極的にチェックしてみてください。
補助金の多くは、情報収集 → 申請 → 審査 → 交付決定 → 実績報告という順番で進みます。 補助金を活用する際は、順番にチェックしていきましょう。
1. 情報を集める
国や自治体の公式サイトで、どんな補助金があるか、募集時期や条件、対象費用を確認します。
2. 計画をつくり、相談する
新しい園舎の建設や改修、ICT導入などを考えている場合は、早めに自治体担当者に相談しましょう。導入したい設備や工事内容、かかる費用を整理し、見積もりや計画書をつくります。
3. 申請書を提出する
必要書類をそろえて、自治体に申請します。締め切りや書類形式は地域ごとに異なるので注意してください。
4. 審査と交付決定
自治体や国の審査を経て、補助金の交付が決まります。決定前に工事や購入を進めると対象外になることがあるので注意しましょう。
5. 実施と支出
計画に沿って工事や設備購入、ICT導入などを実施します。領収書や写真などの書類は必ず保存しておきましょう。
6. 実績報告
工事や購入が終わったら、領収書や稼働状況などを自治体に報告します。確認が終われば、補助金を受け取ることができます。
補助金の申請や手続きにあたって、いつ何をすればよいかを押さえておくと、スムーズに進められます。
保育施設で活用できる補助金は、開園や設備の整備、人材確保、ICT導入などさまざまです。国の補助金と自治体の補助金は併用できる場合もありますが、条件や上限額はそれぞれ異なるため、事前に確認しておくことが大切です。同時に、申請や手続きの流れを把握し、いつ何を行うかをあらかじめ整理しておくと、スムーズに進められるでしょう。
実際に工事や導入を進める際は、補助金の活用経験が豊富な事業者に相談すると、書類の準備や手続きも安心です。補助金を活用した保育ICTの導入をご検討でしたら、コドモンへお気軽にご相談ください。
NEW