公立・私立のICT化を一斉推進! 保護者のデジタル格差ゼロの市を目指して(ICT協議会レポート)【後編】

帯広市 市民福祉部 こども福祉室 こども課 北海道帯広市

施設種別 自治体・公立施設

サービス 登降園管理保護者連絡

成果 事務の省力化手書き業務の削減

この事例の要約

  • 私立保育所のICT導入促進のためこども家庭庁が推進する「ICT協議会」活動を実施
  • 負担が心配だったICT協議会を無理なく実施。市全体でICT化を推進する契機に
  • 「導入後のイメージが深まった」「機能面拡充に向けて背を押してもらえた」と参加者からも好評

市内の保育施設間にみられる保育ICTシステム有無の差異により、入所する施設によって発生してしまう「保護者のデジタル格差」をできるだけなくしていくことを目指し、公立保育所全所にコドモンを導入したほか、私立保育所への保育ICTシステム導入補助金交付やICT推進協議会による研修会等を通し、市全体として保育ICT化を推進している帯広市市民福祉部 こども福祉室 こども課 係長の裏南さまと、ICT導入担当の守山さま。前編では、導入の経緯やその後の活用状況についてお話を伺いました。後編では、私立保育所への導入促進のために、はじめて実施した「ICT協議会」の取り組みについて、実際に参加した私立保育所の施設長の感想も交えてご紹介します。

最初は負担が気になり懐疑的でしたが、やってよかったです

2024年9月20日に実施された「ICT協議会*」について伺います。改めて、協議会を実施した背景を教えてください。

裏南さま:昨年、国の要綱でICT協議会を知った当初は、積極的に取り組むつもりはありませんでした。理由は2つあって、ひとつはこのような協議会を設置する際の事務手続きがすごく大変な印象があったためです。労力がかかるわりに立ち上がったらすぐに形骸化してしまった、という話も聞いたことがあったので、職員の負担が増えるようなことはしたくないと思っていました。
もうひとつは、ICT事業者と一緒に協議会を立ち上げるというのがピンとこなかったためです。事業者を巻き込んで協議会を作るイメージが湧きませんでした。

*ICT協議会とは:こども家庭庁が推進する、地域の保育所等のICT化促進を目的に設立された協議会。自治体・保育事業者・ICT関連事業者が連携した取り組みを行うことで補助率の嵩上げがされる。例えば、民間運営の保育施設では自治体負担が通常の1/4から1/12に抑えることができる(下図参照)。


こどもDX推進協会より引用)

そんな中、どうして立ち上げに踏み切られたんですか?

裏南さま:きっかけは、コドモンさんからの提案でした。「国の要綱の中では、協議会の定義が明確化されていないため、最終的に認定されるかはわからないものの、私立保育所も含めて市全体でICT化の推進に取り組んでいくのであれば、事務負担をなるべくかけず、私立保育所の導入促進につながるやり方を一度考えてみませんか? 」と話をいただきました。

帯広市では、今の話にもあったように、もともと公立保育所と私立保育所と、市全体で一斉に保育ICT化を目指していて、どうしたら市として一体的な取り組みができるか模索していたところで、コドモンさんと話をする中で「そんなに手間がかからないんだったら、やってみようかな?」と気持ちが変わりました。

実際にやってみていかがでしたか?

裏南さま:とにかく、市全体でICTを推進していく契機になればと思い、関係者の協力のもと、協議会活動として研修会や個別相談会を開催しましたが、やってみてよかったと感じています。協議会に参加した私立保育所の導入への温度感も、かなり上がっているのではないかと感じているところです。


(ICT協議会当日の様子)

私立保育所も含めて一体的にICT化を進めようと思われた理由をもう少し詳しく伺いたいです。

裏南さま:発想としては単純で、保育所の入所調整については公立保育所・私立保育所に関わらず、帯広市がその調整機能を担っており、保護者が第1希望として申し込んだ保育所に入所できるとは限らないからです。
仮に公立保育所だけにICTを導入し、私立保育所のほとんどがICT未導入だったとします。保護者が公立保育所を第1希望として申し込んでも、調整点数や空き状況から、実際に入所調整できるのは第2希望の私立保育所になるかもしれません。入所する保育所を保護者の希望のみで決めることができない仕組みのなか、入所調整の結果として保育ICTを利用できる・できないの「デジタル格差」が生まれるのはどうなのか? という違和感から、公立保育所だけではなく、私立保育所の導入もあわせて推進すべきとの視点に立ち、補助金導入の支援も含めた予算要求にいたりました。
すこし時間はかかってしまうかもしれませんが、理想としては、すべての保育施設にICTが導入され、保護者がどの園に行っても、ICT化の恩恵を受けることができる状態を実現したいです。

私立保育所には「外部講師を招いたICT研修会」としてご案内しました

ICT協議会の開催案内をされたとき、私立保育所の先生からはどんな反応がありましたか?

裏南さま:もともと、私立保育所からは「定期的にICTに関する情報を提供してほしい」という要望をいただいていました。「協議会をやります」と案内しても伝わりにくいだろうと思い、「外部から講師を呼んでICT研修会を開催(ICT協議会活動として実施)するので、ぜひご参加いただきたい」旨のご案内をしました。

参加に前向きな方が多かったのですね。

裏南さま:市と保育所とが一体となって保育ICT推進に向けた取り組みをすることが大切であり、ICT協議会という枠組みを通して皆さんで集まって研修会ができたのはとても有意義だったと感じています。研修会を終えた後も、関係者のご協力のもと個別の説明会も実施することができ、「研修1回で終わりではなく、その後のサポートがあるのはありがたい」という印象を持っている方が多いと感じています。

保育士経験に基づく現場目線でのICTのお話が好評でした

協議会当日は、保育ICT推進協会 代表理事 三好冬馬氏の講演もありました。いかがでしたか?

裏南さま:Web形式での登壇を想像していたので、三好さんが現地まで来てくださると聞いて、とても驚きました。もともと保育士として勤務されていた方とお聞きしましたので、事業者目線ではなく現場目線でICT化を説明していただけたのがすごくよかったです。参加した園長からは「導入してみたいと思える内容だった」という声を聞きました。否定的な反応をしている人はいなかったように感じています。


(保育ICT推進協会 三好氏の講演)

実施の後、ICTの導入に対する保育所側の気持ちの変化などあれば伺いたいです。

裏南さま:研修や個別相談会を受けたみなさんの意向については、これから調査を行う予定です。帯広市の私立保育所の法人は、もともとICT化に前向きなところが多かったと感じています。「いつかはICTを入れたいけれど、それがいつになるのかは決まっていない」という声は耳にしていましたが、「そもそもICTに興味がない」「ICTを導入するつもりはない」といった否定的な施設はなかったと思います。そのような状況の中での今回の協議会だったので、劇的な変化こそないものの、導入したい気持ちがより高まった方が多いのではないかと推測しています。

協議会活動により導入への後押しができたのであればよかったです。

裏南さま:そろそろ補助要綱が固まりそうなので、決まりしだい私立保育所に通知して、補助申請をスタートさせようと考えています。

市内保育所のICT化を最大限サポートしたい

ICT協議会を終えて、今後の展望を伺えますでしょうか。

裏南さま:まずは、コドモンを公立保育所に円滑に導入していきたいです。保護者の利便性向上、保育者の負担軽減を、なるべく早く実現できたらと思っています。
私立保育所については、せっかく実現できた補助予算ですので、少しでも多くの施設がICT化に向けて進めるよう、市としても最大限サポートしていきたいです。そのためにも、まずは市の補助要綱をしっかり固めていきたいですね。

守山さま:そうですね。公立保育所については、コドモンの基本の3機能(お知らせ一斉配信、出欠連絡、登降園管理)をまずは入れ終えたいです。そこをクリアしたあとは、現場の意見に耳を傾けながら機能を増やしていきたいですね。保育施設も保護者も便利になることを目指して、各所すり合わせながらいい形でコドモンを広げていけたらと思っています。

裏南さま:あと、少し先の目標として、公立保育所それぞれに「ICTリーダー」のような担当者を1人、2人常設できる体制が理想的である思っています。そして、こども課職員が各保育所のリーダーとつながる本部機能のような役割を担えたらよいのかなと。さらに、各施設に本部機能の担当も担えるくらいICTの知識とスキルを持っている職員を育てることができたら、より円滑に業務がまわると考えています。もちろんすぐには難しいですが、長期的にはそういった状態を目指していきたいです。

現場の声を大切にしながら、前に進んでいく姿勢がとても素敵だと感じました。どうもありがとうございました。

さくら保育園 渡辺さま

続いて、今回ICT協議会に参加された私立園の園長先生にも話を伺いました。最初に話を聞かせてくれたのは、さくら保育園の渡辺浩美園長先生です。

帯広市から、ICT協議会のお知らせが来たときどう感じましたか?

渡辺さま:もともと、私立園長会から帯広市の「こども課」に「補助金の説明会を開いてほしい」と希望を出していたので、会を開いてくれてありがたいと感じました。うちの法人では、昨年からICTの導入を検討しており、私も他園の導入事例を見学したり、直接事業者から説明を受けるなど情報収集はしていたんです。それでも想像しきれない部分があったので、協議会はICT導入後のイメージが深まるいい機会だと感じました。

参加されてみて、会の内容はいかがでしたか?

渡辺さま:三好さんの話の中で、初めて知ることがたくさんありました。特に、監査のときの提出書類について、これまで当たり前にやってきた作業の負担が、随分と軽減できると知ってびっくりしました。終了後、さっそくグループ園の園長や主任に共有しました。

新しい発見があったのですね。

渡辺さま:はい。新しい取り組みを内側から進めるのは、どこから手をつけるか判断に迷うことが多いので、外から新しい視点や情報がもらえるのはありがたいです。今回のICT協議会では、次の行動につながる具体的な知見を得ることができて、やっぱり三好さんのように現場を知っていて想いがある方が作っているものは間違いないなと感じました。

参加してみて、今後のICT導入に向けた展望などあれば教えてください。

渡辺さま:補助金が支給される時期しだいですが、気持ちとしては2024年度中に取り入れて、2025年の4月から本格的に運用したいです。導入したらまずは、登降園の省力化から始めたいと思っています。

導入後へのイメージは湧きましたか?

渡辺さま:そうですね。私は、デジタルやコンピューターが得意ではなく、不安もあったのですが、今回の会に出席して「きっと若い人たちの方がICTに慣れるのが早いから、これからは若い職員に教えてもらうようになるんだろうな」と、先が見えてきました。

あじさい保育園 松山さま

続いて話を聞かせてくれたのは、あじさい保育園の松山久子園長先生。数年前からICTシステムを園で導入しているという松山さまが、今回協議会に参加された理由と感想を伺いました。

すでにICTを活用されていますが、なぜICT協議会に参加されたのですか?

松山さま:ICTシステムを入れて数年経ち、利用しているサービス以外でも様々な機能が出てきている中で、そろそろ見直しの時期だと感じていました。特に保育の計画などは、もっと省力化できるのではないかと思うことがありました。自分たちだけで考えていると、よくわからなくなってしまうので、いろんな方の話を聞いて整理したいと思い参加しました。

実際に参加してみて、いかがでしたか?

松山さま:三好さんのお話はすごくわかりやすかったです。私たちの質問にも現場に近い目線で答えてくださいました。監査に関するほかの園の話や、長期・短期計画の立て方について詳しく聞けたのもよかったです。国の動きについても「今後、色々また変わっていくんだな」と大枠を理解することができました。

協議会後の「個別相談会」にも参加されたと聞きました。

松山さま:はい。数か月前から、今使っているシステムの機能追加の話がありました。もし課金して機能を増やした場合、ICT補助金の対象になるのかわからず相談しました。回答については、市のこども課さんが持ち帰って調べてくれています。また、今のICTシステムをアップグレードする場合と、他社に乗り換える場合のメリット・デメリットについても、具体的に聞けて参考になりました。

今後につながる収穫は何かありましたか?

松山さま:そうですね。ちょうど「そろそろ、ICTの機能面拡充に向けて動かなきゃ」と思っていたタイミングで、今回の協議会に参加できて、背中を押してもらえた形になりました。業務のさらなる省力化に向けて、すこしずつですが動き始めています。

よかったです、どうもありがとうございました。

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