できることは思いっきり! 苦手なことは精一杯!【白井純子さん】

療育のひと 児童発達支援・放課後等デイサービス

ベビーシッターから飛び込んだ療育の世界

ー白井さんが療育の道を志したきっかけを教えてください。

もともとは子どもが好きで、都内でベビーシッターの仕事をしていました。その後、結婚・出産を機に地元の千葉へ戻ったのですが、当時はシッターの仕事がなかなかなくて。自分の子どもが病弱だったこともあり、育児を優先しながら事務の仕事もしましたが、やはり子どもに携わりたいという思いが強かったんです。そこで出会ったのが療育でした。

それまでも障がいのある子どもの育ちに対して関心はありましたが、知識も資格もない。そんな私に「大丈夫、現場で研修するから」と受け入れてくれた集団療育を行っている施設に飛び込みました。そこで指導員として2年、児童指導員として4年の計6年間、現場で学びながら過ごしました。

ー実際に入ってみていかがでしたか。

始めてみたら「なんて楽しいんだろう」って。うまく言葉でコミュニケーションが取れないお子さんとも、意思疎通ができる瞬間が必ずあります。そんなふうに、心が通じ合ったときに感じるやりがいや感動を現場でいっぱいもらいながら働いていました。

集団療育での違和感と個別療育への転換

ー児童指導員として経験を積む中で、個別療育を意識されるようになったのはなぜですか。

集団療育の現場に長くいる中で、次第に自分の中で大きく二つの疑問が湧いてきたんです。
ひとつは、集団生活の難しさへのアプローチです。集団に入れないから集団療育を受けたいという保護者は多いのですが、それはその前の個別療育が足りないからではないかなと。個が安定していれば、その先で集団にも入れるようになるんじゃないか。もっと個別で深く関わりたいという思いが強くなりました。

ーもうひとつの理由も教えてください。

個別支援計画の内容に対する違和感です。当時いた施設では保護者のニーズを第一に優先する方針でしたが、現場で見ている子どもの姿と親御さんが求めていることにギャップがあることも少なくないんですよね。

挨拶や身支度ができるようになるといった保護者のニーズも大切ですが、せっかく集団療育の場なのであれば、もっとコミュニケーションや協調性を高めることに焦点を当てるべきではないか、とモヤモヤしていました。その子の特性を含めた強みをもっと伸ばしてあげたい、個々に関わる時間を大切にしたいという思いが、個別療育の施設に転職する原動力になりました。

背中を押してくれた尊敬する児発管との出会い

ーそこから児発管という役割に挑戦されたのですね。

実は私、人とお話しするのがあまり得意ではなくて、自分に児発管が務まるとは思っていなかったんです。現場の仕事は大好きでしたが、自信がなかった。そんなときに出会ったのが、当時働いていた施設の児発管だった井上さんでした。

井上さんは知識も経験も豊富で、引き出しをたくさん持っていて、まさに「こんなふうになりたい」と思える憧れの存在でした。 私が悩んでいるときに、井上さんから「白井さんならいい児発管になるよ」と背中を押してもらったことが、資格を取る大きなきっかけになりましたね。

ー井上さんから学んだことで、特に印象的なことはありますか?

井上さんの背中を見て働くうちに、子どもたちや保護者、そして職員に対しても、いい意味で「線を引く」というか、客観的な視点を持てるようになりました。 信頼関係が深まるとどうしても距離が近づきますが、そこで一線を引かないと依存が生まれたり、「この先生じゃないと指示が入らない」といった問題が起きてしまいます。井上さんには、支援者として適切な距離感を保ちながら、常に客観的な視点で全体を見渡しながら分析することの大切さを教えてもらったと感じています。

私たちの施設は子どもも職員も「失敗していい場所」

ー白井さんが児発管として大切にしていることを教えてください。

「できることは思いっきり! 苦手なことは精一杯!」という姿勢をずっと大切にしています。これは子どもたちに対しても、一緒に働く職員に対しても同じです。完璧な人間なんていないですから。だからこそ、私たちの施設は「失敗していい場所」だと伝えています。

ー「失敗していい」と言ってもらえると安心して挑戦できそうです。

療育の現場って、職員が楽しんでいないと子どもも楽しめないんですよ。先日、子どもたちと木登りをしたんです。子どもは「木に登りたい」という気持ちがあるけれど、登っていいのかとか、登り方がわからないなど不安がある。

だから私がまず、木に登ってみせたんです(笑)。それを見た子どもが「やってみたい」と感じて登り始め、いつもとは違う景色を見て「できた!」と喜ぶ。ハチャメチャでいいから、その中で何かを発見し楽しさを感じてほしいんです。失敗を恐れずに挑戦する力、失敗から学ぶ力を、療育を通じて育てていきたいと思っています。


(木登り中の一枚。「『素敵だな』と思った職員が撮ってくれました」)

ー児発管は経営層と現場の間に立つため「孤独を感じやすい」と言われることもあります。白井さんはいかがですか。

私はまだ、孤独を感じるまでいっていなくて。一緒に働いてくれている職員の方たちに本当に支えてもらっていますし、今はもう必死すぎて余裕もない、というのが正直なところです。でも、個別支援計画を立てているときに「あ、これだ!」って支援の内容がひらめいたり、あの子にはこれが一番合うんだっていうものが見つけられたときは、やっぱりすごく嬉しいんですよね。

実際にその支援を形にしてくれるのは職員たちですが、あとからフィードバックしてもらっています。私は現場が大好きなので、今でも送迎に出ますし、ひとりの児童指導員として支援にも入ります。そうやって現場に立ち続けて、みんなと一緒に動いているからこそ、孤独を感じずに済んでいるのかなという気がします。

みんなで悩んで、みんなで答えを出す

ー管理者も兼務されていますが、チーム運営において工夫されていることはありますか。

職員には、どんな些細な疑問や不安でもいいから口に出して、誰かの耳に入れるように伝えています。ひとりでモヤモヤを抱え込まない環境をつくることが、施設として統一感のある支援につながるからです。
また、私が答えを教えるのではなくヒントを与えて、支援方法を職員同士で導き出してもらうようにしています。そうしないと職員も育たないと考えているので、みんなで悩んでみんなで答えを出すというのは心がけています。

ーこれからの目標があれば教えてください。

私が井上さんに感じたように、私の働く姿を見て「児発管になりたい」と思ってくれる職員が現れたら、これほど嬉しいことはないですね。この仕事は毎日が違って、本当に楽しいしおもしろいんです。

今はまだ学校の先生と接していて、福祉への理解が及ばない場面に直面することも少なくありません。「放デイに行ってなにになるの?」とおっしゃる方もいます。これからもっと療育という仕事がメジャーになって、専門性も高まり誰もが福祉に関われる社会になればいいなと思います。

ー最後に児発管を目指している方へのメッセージをお願いします。

現場で子どもと接する中で「この子に対して、私ならこうする」という確固たるひらめきが芽生える瞬間を大切にしてほしいです。自分の中にやりたい療育のタネが見つかったとき、それが児発管として歩み出す最高のタイミングだと思います。

(撮影:櫻林栄吉、文・編集:コドモン編集部)

白井さんが働いている施設
施設名:児童発達支援・放課後等デイサービス プレシャスタイム
形態:児童発達支援・放課後等デイサービス(定員:10名)
設立:2024年
所在地:千葉県茂原市八千代3丁目12-13 ナルケビル2階

※2026年3月24日時点の情報です

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